52話 暗雲を晴らすが為に
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「ナタリア!」
一人走って行ってしまったナタリアを追いかけて港へと走る。そこにはラルゴへと弓を構えるナタリアの姿があった。
「お仲間が来たようだぞ、姫」
私たちの姿に気が付いたラルゴが視線だけをこちらへと向ける。ナタリアはまだ弓を構えたまま。
「……おまえは……!おまえは……何故六神将に入ったのです」
「そんなことを俺に聞いてどうする」
まさか敵対している者の中に実の父親がいるとは思いもしなかっただろう。だからこそ、知りたい。
「答えなさい!バダック!!」
これこそまさかだったか。ナタリアの口から実の名を発せられればいくらラルゴとて驚かないわけがない。
「……昔、妻は……シルヴィアはここから見る夕日が好きだった。あの日、俺は砂漠越えのキャラバン隊の護衛を終えて帰宅したところだった」
語り始めたラルゴは海へと体を向ける。それを見てナタリアは構えていた弓を下ろし、話に耳を傾ける。
「家に帰ると、シルヴィアも数日前に生まれたばかりの赤ん坊もいない。いやな予感ってのは……本当にあるんだなぁ。家ン中に夕日が射し込んで、そりゃ赤くてな。俺は必死になって街中を探したよ。だがシルヴィアは見つからなかった」
シルヴィアさんはどうしましたの?というナタリアの問いにラルゴは背を向けたまま、数日後に港で浮かんでいるのを発見されたという。この言葉に全員が息を飲んだ。
「シルヴィアは生まれたばかりの赤ん坊を奪われ、錯乱して自害したのだ」
ラルゴがいない間、一人で苦しんだ結果がそれだったのだろう。夫に相談することもなく自ら命を絶つという選択をしてしまった。人の死の預言は詠まれない。だからシルヴィアさんが預言によって子供が奪われるなど知らないし自ら命を絶つという未来も知らない。生めば夫と子供と幸せに暮らせると信じていたから。