51話 それでも私は両手を広げよう
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「知ってるのにね……それに代わる方法が思いつかないの」
私やティアの体から追いだしたように世界中に吹き出した瘴気を何処かへと飛ばせればいいのに。それは不可能だと数秒で理解してしまう。消滅、と言うことも出来るかもしれない。まだ何かを消滅させるということはしたことはない。あくまで別の場所へと飛ばしただけ。
「私の魔術で何とか出来ればいいのに……」
私の力は言葉を具象化する力。頭に浮かんだイメージを言葉として発して形にする。消滅は形を作るものではなく消すもの。移動方陣と千里眼はまた別の力。どうにか利用できないかとこれまで考えてきたけど、ルークの力の代わりになるものは思い浮かばなかった。
「いいんだ。真咲にばっか頼れないよ」
「……ルーク」
私は何もしてないよ。ルークに何もしてあげられない。なのにルークは笑ってくれる。
「あれだけ馬鹿やった俺に誰よりも早く手を差し伸べてくれたのも信じてくれたのも真咲だった」
だからこれ以上は頼れない。という。それでもと思ってしまう私が傲慢なのか。
「あなたが悩んでいたことは知っていましたが、思ったより思い詰めていたようですよ」
「出来ることをしたいだけです」
全てを変えることは出来ない。そんなことはわかっている。ただ何も出来ないことが歯痒いだけ。
「真咲だけじゃない。俺たちも何も出来ないんだもんな」
「……そうですわね」
思いは同じなのに、どうにもならない。時にはそれを受け止めなくてはいけないのだ。
「そろそろ出発しましょう」
ジェイドに促され、私たちはピオニーたちに頭を下げ教会を後にする。アルビオールに乗るまでの間、誰一人言葉を発することなく。