50話 時に残酷な願い
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「なるほどね。パパとママをアッシュに会わせることだったのか」
ルークがアッシュとの待ち合わせを屋敷にした理由。アッシュが屋敷に近寄りたがらないのはルークもわかっていただろう。だから無理やり呼びつけたのだ。
「でも、ルーク。よかったの?あなたはアッシュがこの家に来るのを……」
「……怖がってた。その通りさ。だけど……俺はやっぱりレプリカだし……あいつは本物だし。いつかいらないって言われるなら……」
「やめとけ、ルーク」
心配するティアの言葉に頷き、卑屈な物言いをするルーク。けどそれをガイが怒気の籠もった声で制する。ルークも目を丸くしてガイを見る。
「おかしいと思ったんだ。この間から妙に考え込んでたのは、自分を殺して瘴気を消すなんて馬鹿なことを考えてたせいだろ」
ずっと気にしていたのだろう。特にレプリカの増加に伴って、レプリカに対する批判も相次いでいた。ルークがベルケンドでの話とその事を気にしていなかったわけもなく、寧ろそれについて今後のことを考えていたのをガイはちゃんと見ていた。それを聞いてティア、アニス、ミュウが驚きルークを見る。
「ルーク!馬鹿なことを考えるのはやめて!」
悲鳴にも似た声を上げるティア。彼女に泣かれるのは嫌なのか、ルークまで泣きそうに顔を歪める。
「自分はレプリカだ、偽物だなんて卑屈なことを考えるから、いらないって言われることを考えるんだ。そんなこと意味ないことだろうが」
目を釣り上げ、厳しい口調でルークを叱る。誰よりもルークを見てきたから、誰よりもルークを知っているから言えるのだろう。
「だけど俺、自分がレプリカだって知ってからずっと考えてきたんだ。俺はどうして生まれてきたんだろう。俺は何者で、何のために生きているんだろうって。俺は……レプリカは本当はここに居ちゃいけない存在なんだ」
目に涙を溜め、自問自答した後、自分を否定するルーク。
「いい加減にしろ!」
「……全くだ」
堪忍袋の緒が切れた、かのようにガイが声を上げると、屋敷の方からもう一つの声。
「俺はもうルークじゃない。この家には二度と戻らない。馬鹿なことを言う前にその卑屈根性を強制したらどうだ」
苛々する!とアッシュは言い捨てて立ち去る。私はルークを横目で見つつアッシュを追いかけた。
「あまりルークを悪く思わないでね」
「おまえは……あいつに肩を持ってたな」
屋敷を出たところでアッシュの隣につく。
「ルークはルークで怖いんだよ」
自分がレプリカだと言う事実は消せない。被験者ルークが生きているとわかれば、今まで自分の居場所だと信じていたものを奪われると思い始めてしまう。知らずとは言え奪ったはずの場所を奪われるかもしれないという恐怖に襲われているんだ。
「……知るか!」
「諦めないでね。まだ……」
どちらも苦悩してるのはわかっている。どちらも責めることが出来ない。そっとアッシュの頭を撫でると嫌な顔をされたけど、私の言葉の何かに察したのか、真咲?と眉間に皺を寄せる。またね、それだけを言い残して私は屋敷へと戻った。今はまだ、言葉にするときではないから。