48話 彼らの標の向く姿
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「どうした?ルーク」
島の奥へ奥へと進んでいるとふと足を止めるルーク。その視線は床へと落とされていた。
「いや……綺麗な街だったんだろうなって思って」
「……そうだな。もう微かにしか覚えちゃいないが、大きな港があって活気のある街だったよ」
誰もいない。ただ建物だけが並ぶ街。その静けさからか当時のことは想像するしかない。懐かしそうに、けど辛そうに目を細めるガイ。
「崩落、津波……大半の人々は何が起きたのかわからないまま亡くなったのでしょうね」
或いはその方が幸せだったのかもしれません。と眼鏡を直す仕草で顔を手で覆い隠す。同じ死でも苦痛を感じずのほうがよいのかもしれない……それは生き残っている人たちだけの感覚かも知れない。
「確かに生き残った人々も地獄だったでしょうね。これでは作物も育たないわ……」
「街やそこに住む人。誰にも罪は無かったろうに……」
何が悪かった……わかっていても知っていても、全ては今更。責めても誰も帰ってこない。それはこれからの教訓とし、そして戒めとして刻み込むしかない。
「……流されて、忘れられた無辜の島……なのかな」
「忘れられた無辜の島……ね」
ルークが空を仰ぐと釣られるかのように私たちも空を仰ぐ。
「なら、私たちはちゃんと覚えてなきゃね」
ここに来た事実は私たちの中に刻み込まれたんだから。私より少し背の高いルークの頭を数回撫でる。いつもなら嫌がるけど、今回は大人しく受け入れて、うんと頷く。
「けどここってなんなんだろ?」
「もう少し奥に行ってみようぜ」
この後、たぶん彼女が待っている。正直、何もない自信はない。もしもの場合どう説き伏せるかが問題。大人しく話を聞いてくれればいいんだけど、と一人小さく溜息吐いて歩き出した。