43話 手を取る未来の為に
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「預言は麻薬だ。東に向かえば大金を拾うだろう――そんな預言を実行して、その通りになれば、次の預言も信じたくなる。ユリアは二千年かけて、人類を預言中毒にしてしまった」
片手でオルガンの鍵盤を鳴らし、話し終えると同時に両の手で鍵盤を叩きつける。不協和音。叩きつけた鍵盤の奏でた音か、私たちの指し示した道か。ヴァンの言うことが間違ってるとは言わない、でも――
「二千年にも及ぶ歪みを矯正するには、劇薬が必要だ」
正しいとも言いたくない。それを認めてしまったら、世界はだだ滅ぶのみ。
「レプリカ世界が劇薬ですか……大した妄想力だ」
「フ……妄想……それもよかろう」
被験者のいない世界。己の思考を持たない与えられた事だけをこなす、まるで機械のような世界。
「確かに預言のいいなりに生きているこの世界は歪んでいるさ。だかレプリカの世界ってのも、相当歪んでるぜ?」
一度楽をしてしまえば人は堕落してしまう。しかしそれを理由に世界を作り替える権利なんて誰も持っていない。
「その通りですわ。あなたが軽挙妄動を慎まねば、ティアが苦しみますわ」
一番近くて大切な者を傷つけてまで為さねばならぬ事とは何か。なぜそれを彼が為さねばならぬか。わからないでもないけど、やはりわかりたくもない。
「総長の妹でしょ!妹と戦うなんて……総長、本気なの?」
自らの願いを成就させるためなら、肉親すら刃を向ける。それは本心なのか。
「メシュティアリカ。私も残念なのだ。おまえがユリアシティで大人しくしていれば……そうすればおまえだけは、助けてやれたものを」
この期に及んでまだ、隠すのか。助けてやれた……それは彼が思うものと彼女の思うものとは違う。たぶん彼自身、もうその境界線がわからなくなってるだろう。それを優しさと勘違いしている。