6話 消せない傷痕
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「―――っ!!」
意識が戻れば、今にも戻しそうな程の吐き気を感じた。口を両手で覆い、必死に耐えた。視線だけを動かせば、そこは野宿をしていた場所だった。すでに夜中なのだろう、空に見える月も位置は高かった。離れたところで、みんなが眠っているのが見える。どうやら木に寄りかかったまま眠ってしまったらしい。吐き気の苦しさに涙が出てきた。
「真咲」
私の名を呼んだ声に驚き、口を覆った手を離して顔を上げた。目の前にはいつの間にかジェイドが立っていた。
「だいぶ、うなされていましたが、大丈夫ですか?」
「…大丈夫、です」
私は吐き気と涙に耐え、そう言ったが声は震えていた。心情を悟られたくなくて、視線を逸らす。あの赤い瞳に私の今の感情を見抜かれてしまいそうだったから。目線を合わせないようにしていると、すーっと私の頬を何かが撫でた。
「あ、れ…?」
ジェイドの手が私の頬に触れ、指で目の涙を拭ったのだ。片膝をつき、私の顔を覗き込む。ほんとは全てを吐き出したかった。大声で叫びたかった。腹の中をぐるぐると回る、全ての感情を。でも、見せたくはなかった。大人なんだから、我慢しなくては、と感情を押し殺す。
――けど、彼はそんなことすでにお見通しだった。
「泣いてもいいんですよ」
涙を拭った手と逆の手で私の頭を撫でる。それはとても心地よくて、居心地は悪かった。他人のことなんて関心のないはずなのに…でも、頭を撫でているその手は温かくて、温かくて…辛かった。