36話 手を取り合う時
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「マルクトと平和条約を結び、外殻を魔界へ降ろすことを許可していただきたいんです」
各地で崩落の兆しが出ている。近い未来、外殻が魔界へ崩落するのは回避できない。その為の許可が欲しい。マルクトと手を取って欲しいと願い出る。
「なんということを!マルクト帝国は長年の敵国。そのようなことを申すとは、やはり売国奴どもよ」
「だまされてはなりませんぞ、陛下。貴奴ら、マルクトに鼻薬でもかがされたのでしょう。所詮はお受けの血を引かぬ、偽物の戯れ言……」
モースの言葉にナタリアが表情を暗くする。ルークも自分のことのように怒りを露わにしてモースを睨みつける。
「だまりなさい。血統だけにこだわる愚か者」
イオンの叱咤にぐぅう…と小さく唸るモース。否定はしないということだ。
「生まれながらの王女などいませんよ。そうあろうと努力した者だけが、王女と呼ばれるに足る品格を得られるのです」
「民無くては国はありません。その民は、ナタリアを王女に選びました。それが答えでは?」
ジェイドの言葉に次ぐように私も口を出す。その場には居なかった。でも、民は殺されそうになったナタリアを助けた。
それに偽りはない。自分たちの主君を民が選び認めた。それを否定することなんて私は許さない。
「……ジェイドの言うような品性が、真咲が言うように民が認めてくれたのか、わたくしにはわかりません。でもわたくしはお父様のお傍で十八年間育てられました。その年月にかけて、わたしくは誇りを持って宣言しますわ。わたしくはこの国とお父様を愛するが故に、マルクトとの平和と、大地の降下を望んでいるのです」
真っ直ぐとインゴベルト陛下を見つめて、はっきりとした口調で己の思いを語る。揺るぎないその瞳で。陛下もただナタリアを見つめ返す。葛藤はしていたはず。誰よりもナタリアを愛してるんだから。誰かの言葉なんて聞きたくない、信じたくなかった筈だと、私は信じたい。