35話 共に見る世界に
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「ベルケンドでの事、覚えてますか?」
彼は何も言わない。吐いていたらどうするか、ではなく吐きました、と言った私に何も言わない。しばしの沈黙の後に順を追って話そうと彼からは視線は離さず口を開く。
「ジェイドさんは……私に想いを告げてくれました。そして私は断りました……」
好きになることがこんなに苦しいものだと知ってしまった。想いに気付いた瞬間にそれを打ち砕かれたときのことを、思い出してしまい彼の想いを無碍にした。
「忘れられない、て言って……」
黙って見つめられると逆に怖い。何か言って?と言いたくなる。私の言い訳を視線を一度も外さないで聞いている。
「嘘です……もう、記憶の片隅になるくらい……忘れてるんです……」
好きだった。凄く好きだった。彼だけと思っていた。でも出会ってしまった、好きになってしまった……ジェイドに。
「……ごめんなさい」
伝えなきゃ。謝るんじゃなくて、ちゃんと伝えなきゃいけないのに。ああ、もう……駄目なのに。涙は勝手に流れ出てくる。
「私……わた……」
「真咲」
そっと両手で触れるように頬を挟むジェイド。出掛けた言葉は飲み込まれてゆっくりと瞬きをして彼を見上げる。驚きで言葉が出ない。だって、微笑んでるんだもん。私、嘘吐いてたのに笑ってるの。
「どう、して…?」
怒らないの?私は嘘を吐いてあなたを騙してたのに。
「嘘を吐いた理由と、あなたの本当の気持ちを教えてくれませんか?」
どうしてそんなに優しいの。もう抑えられないよ。フラれてもいいや。ちゃんと伝えよう。この人に、私の想いの全てを伝えよう。
「いつ乖離して消えるかわからない私への想いを忘れて欲しかった……本当は、あなたが好きなのに……忘れてもらいたかった」
死なない。乖離して死なないとわかってもあなたに想いを告げなかった私を、あなたは許してくれますか?