35話 共に見る世界に
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お父様!」
勢いよく扉を開けて部屋の中に入るとインゴベルト陛下とアルバインがいた。
「ナタリア!」
「へ、兵士たちは何を……」
まさか再び姿を見ることはないと思っていたのかその表情は酷く驚いたもの。アルバインに至っては顔が青ざめている。兵士を薙ぎ倒して入ってきたとでも思っているのだろうか。
「伯父上!ここには兵は必要ない筈です。ナタリアはあなたの娘だ!」
「……わ、私の娘はとうに亡くなった……」
視線を逸らして、まるで自分に言い聞かせるように、本当のナタリアは亡くなったと。確かに間違いはない。間違いはないけど。インゴベルト陛下の言葉に反応したのはルーク。ここにいるナタリアがあなたの娘だ。十八年の記憶がそう言っていると。互いに本当のことなど知らなかった。知らなくても親子として共にあり続けたのは嘘じゃない。
「記憶……」
「突然誰かに本当の娘じゃないって言われても、それまでの記憶は変わらない。親子の思い出は二人だけのものだ」
ルークが更に言葉を続ければインゴベルト陛下はわかっている!と声を荒げる。その背後には、幼いナタリアの肖像画。答えなんて最初から出ているのに。
「いいのです、ルーク。お父様……いえ、陛下。わたくしを罪人とおっしゃるなら、それもいいでしょう。ですが、どうかこれ以上マルクトと争うのはおやめ下さい」
顔を少しだけルークに向けてすぐにインゴベルト陛下へと戻す。前を見つめ『お父様』ではなく『陛下』と言い換えて、必死に懇願する。
「あなた方がどのような思惑でアクゼリュスへ使者を送ったのか、私は聞きません。知りたくもない。ですが私は、ピオニー九世陛下から和平の使者を任されました。私に対する信をあなた方のために損なうつもりはありません」
イオンの言葉に顔を歪める二人。ダアトとと言うよりモースと親交の深いこの国だからか、それとも彼の言葉はよほど胸に刺さったのか言葉を失っている。悪い言い方をするなら導師であるイオンを裏切ってモースの言葉のみを信じたという事になる。