32話 たとえ罪と言われても伝えられぬ想い
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「……はぁ」
真咲を残して部屋を出る。自惚れていたわけではないが、全く脈がないとも思わなかった。多少なりとも好意は持ってくれていると思いこんでいただけなのかもしれない。首を軽く振り、この場を離れようとするとドアの奥でごとっと言う音。何かと思うと扉越しから聞こえた声。
「……ごめんなさい……ごめんなさい」
真咲?
彼女の声。誰に何に対して謝罪しているというのだ。その場から離れられなくなる。
「……愛してる……本当は、愛してるのに……」
耳を疑った。まさか、彼女の口からそんな言葉が聞かれるとは。泣いている。今すぐに扉を開けて抱きしめようかと思った時だった。
「なんで、私は……こんな体なの?」
涙声で、振り絞るように吐き捨てる真咲。その言葉の意味は、私も皆も知っているとおり真咲はいつ乖離して消えてもおかしくはない体。
「……もうすぐ、死んじゃう女の想いなんて……重すぎるよね」
まるで私が扉の向こうにいるのを知っているかのような言葉。これを聞かなければ、今すぐにでも扉を開け、彼女の細い体を抱き締め、無理矢理にだろうとその唇を塞いでいたかもしれない。どんなに否定しようと拒もうと、何度でも愛してると囁いただろう。
「……真咲」
私の呟きなど聞こえはしないだろう。私の想いは真咲を困らせるだけなのか。
「……ごめんなさい、ジェイド。でも、愛してます」
彼女も同じ想いを抱いてくれている。ならば、今の私に出来ることはこの想いを抱き続け、真咲が今後、何の不自由なく生きていけるように、その体に戻れるようにするまで。諦めることなど出来るものか。私が愛した女性を見殺しなどしない。
心に誓いを立て、今も扉の向こうで泣く彼女にもう一度小声で愛してるとだけ呟きこの場を後にした。