30話 蝕む闇に近づく者へ
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「はい……遠くない未来に、自分らに仇なす存在になる。預言ではないけどこれからしようとしている事とは違う未来へと導く存在……になると言っていたと」
被験者イオンはどこまで知っていたのだろう。アッシュはヴァンから聞いたという事は言わなかった。話に出てくるのは被験者イオンのほう。知らない彼にどこか恐怖を覚える。
「アッシュも聞いたのは五年も前だというのでそれ以上は覚えていないと」
「少なくても、ヴァンはカイツールで顔を合わせたときから知っていたことになりますね」
名を問われたときから、私という存在を知ったときから全てを知っていた。だからカイツール軍港で神託の盾騎士団に来ないかと誘ったのか。アリエッタを利用して、この力を自分の物にしたかったのか。真意はわからなくても疑いは膨れ上がっていくばかり。
「私ってそんな大それた人間なんですかね」
二千年前の人間の生まれ変わりとか、音素を持たない言葉を具象化させれる力の唯一の術士とか。違う世界を渡り移るだけって有り得なくて異常だと思ってた。この世界に来てからは私の知るものとは違いすぎていて時々頭がパンクしそうになる。
「あなたがそんな大それた人間だったら私はどうなるんですか」
やれやれとわざとらしく肩を竦める彼にはい?と反射的に聞き返してしまう。何をいきなり言うのだろうと。
「死霊使いやら色々な名で呼ばれたり、根も葉もない噂を立てられたりしてますからねぇ」
まあ、そんなもの気にはしませんが。と笑みを浮かべ私を見る。
「それに、一緒に旅する仲間もそれぞれ辛い体験や過去があります」
そこまで言えば私が何を言いたいのかわかりますね、と目が語っている。忘れてはいけない。私だけが不幸なわけではない。さっきだってナタリアの事があったばかりだ。自惚れるな……ヴァンはこの力を利用したいだけなんだ。