29話 暗闇に落とされても明けぬ夜はない
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「八人でやんスから8000ガルドでやんスな」
「呆れた商売ね……」
一人分跳ね上がった金額に呆れた溜息しかでない。余計な一言を言ったミュウの頬をルークが引っ張り、結局ミュウは泣くことになった。
「払うのか?払わないのか?」
ここでの選択肢。どちらでも構わないけどルークはなんて答えるのだろうとみんなで彼へと視線を向ける。
「高いよ……」
「そうだな。大体馬鹿正直に払うこともないと思うぜ」
素直に払う必要はない。扉一つ通るのに一人1000ガルドは相場以前の問題。というよりいくら戦争中とはいえ憩いの場である酒場を通るのに金を払うなんて甚だおかしな話だ。
「ここはまだマルクですよねぇ?大佐、捕まえちゃって下さいよぅ。あ、真咲でもいいよ」
「私でもって何よ」
権限で言えばジェイドが指示出すのは間違いないけど私でもって。自分で言うのもなんだけどなんちゃって軍人なんだよ?私の顔を知ってるマルクト人なんてグランコクマで会った数知れない程度のみなのに。ちょっと虚しくなってきた。
「……だそうです。ここを通してくれるのなら、見逃してあげてもいいと思うのですが」
「お言葉ですがね、ダンナ。あんたらがあっしら平民を苦しめる戦争をおっぱじめたから、あっしらはそいつを利用して金儲けさせて貰ってるでさぁな」
今なら見なかったことにすると言うジェイドにヨークが自分たちは被害者なのだと言う。聞こえ方によっては正当化している。
「……それもそうですわね。ここはお金を払って……」
「ナタリアらしくないわね。戦争があろうとなかろうと、犯罪を行うのは個人の道徳に因る筈よ」
先ほどの件がやはり堪えているかティアの言うようにらしくない発言をするナタリア。すべてが悲観的というか、いつもの彼女なら目の前の悪事を許すわけがないのに。いずれわかることとはいえこんな非道な真実はそんな簡単に受け止められない。