29話 暗闇に落とされても明けぬ夜はない
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「あやつの力は野放しにしておけば脅威に……」
「彼女はいいのです」
まるで異様なものを見るような視線を向けるモースにイオンはやんわりと言う。しかし……と引き下がろうとしないモースにいいと言っています。と口調を強めるイオンにそれ以上は何も言わないモース。
「では、アニスをお願いします」
それだけを言い、イオンはモースと共に国境の向こうへと歩いて行ってしまった。
「イオンの奴、何考えてんだ……それに今のは……」
「アニスをここに残したということは、いずれは戻られるつもりなのでしょ。それより……」
イオンを見送ったあと、私を見るルーク。さっきのモースの言葉が気にかかっているんだろう。けどジェイドはナタリアの方を見る。この場で一番気にするべきはナタリアの筈だと言わんばかりに。正直、追求されてもそれについては答えようがない。私自身もその呼び名については何も知らないんだから。
「……わたくしなら、大丈夫です。それよりもバチカルへ参りましょう。もはやキムラスカ軍を止められるのは、父……いえ国王陛下だけですわ」
見てる方が痛々しいくらい気丈に振る舞うナタリア。今まで最愛の父と慕い続けていた人を『国王陛下』と他人行儀な呼び方をしなければいけないのだから。
「それなら国境を越える方法を探さないといけないわ」
「ここは国境線上の街です。きっと通り抜けられる場所がありますよ」
と私にそっと視線を向けるジェイド。何処か意に反する気がしないでもない時間の無駄をする訳にはいかない。ルグニカ平野の崩落は始まりかけているのだから。
「あれ、です」
半歩前に出てジェイドにだけ聞こえるように囁き、視線だけを酒場へと向ける。見ただけで瞬時に察してくれた彼は皆に酒場で探ろうと理由を付けそちらに向かうことにした。