29話 暗闇に落とされても明けぬ夜はない
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「まこと恐ろしいのはおまえの兄であろう。それより導師イオン。この期に及んで、まだ停戦を訴えるおつもりですか」
「いえ、私は一度ダアトに戻ろうと思います」
「イオン様!?マジですか!?」
イオンの突然の言葉にアニスが驚き、帰国すればまたヴァンに利用されると大声を上げる。そう思ったのはアニスだけではないはず。けど、イオンは組を分けるときに考えがあると告げている。それがこの事だと思ってはいないだろうけど。
「ヴァンの奴に勝手な真似はさせぬ……さすがにこれ以上、外殻の崩落を狙われては少々面倒だ」
本当に面倒くさそうに言うモース。
「力ずくでこられたら……」
「そうなったら、アニスが助けに来てくれますよね」
不安を露わにするアニスにイオンはにっこりと微笑む。まさかの名指しにふへ?と目を丸くするアニス。あ、可愛い……不謹慎ながらもついついそう思ってしまう。
「唱師アニス・タトリン。ただいまを以て、あなたを導師守護役から解任します」
「ちょっ、ちょっと待って下さい!そんなの困りますぅ!」
何の前置きなしにこんな所での解任通告に焦るアニスにイオンが顔を少しだけ近づけ誰にも聞こえない程度の声で何かを言う。そしてイオンはモースの側へと歩き出す。
「ダアトに参りましょう」
「御意のままに……ですがいいのですか?『導きの標』はあのままで」
この場を去ろうとするイオンに小さく頭を垂らした後、なぜか私を見るモース。全員の視線も私へと注がれる。
「導きの……標?」
「真咲のこと?」
どうして私を……導きの標って。モースまでも何か知っているというの?私自身がまだ全てを知らない。二千年も前のことをどうして皆知っていると言うんだろう。