29話 暗闇に落とされても明けぬ夜はない
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「でたらめではない。ではあの者の髪と目の色を何とする。いにしえより、ランバルディア王家に連なるものは赤い髪と緑の瞳であった。しかしあの者の髪は金色。亡き王妃様は夜のような黒髪でございましたな」
どれこもこれも正しく間違いないからこそやりきれない。これだけでもすでにナタリアの顔色は真っ青になっているというのに、とどめを刺すかのようにモースはこの事はすでにインゴベルト陛下にも証拠の品を添えて伝え、ナタリアを国を謀る大罪人として裁くだろうと言った。
「そんな……そんな筈ありませんわ……」
先ほどの威勢は何処に行った……と言いたくなるほどナタリアは力なく呟くように否定の言葉を口にする。それを聞いていたアルマンダインや両国の兵士たちもざわめきだす。そして一度は開いた国境は閉ざされてしまった。
「伯爵。そろそろ戦場に戻られた方がよろしいのでは」
「……む、むう。そうだな」
モースに促されたアルマンダインは足早にこの場を後にする。残されたのは私たちとモース。
「おい、待てよ!戦場は崩落するんだぞ!」
「それがどうした」
崩落に巻き込まれれば待つのは死のみ。今なら間に合うが、遅くなればなるほど逃げ場はなくなる。さすがにセントビナーの住人のようにユリアシティに連れていくわけにもいかないだろう。これだけの大人数は無理だ。それをわかっていて、他人事のように返すモースに一同言葉を失う。
「戦争さえ無事に発生すれば、預言は果たされる。ユリアシティの連中は崩落ごときで何を怯えているのだ」
「大詠師モース……なんて恐ろしいことを……」
預言さえ守られればそれによって死ぬ人間などどうでもいいと吐き捨てるモースにティアまでもが顔色を変える。信じたくはなかった部分があったからか、その言葉に愕然とする。