29話 暗闇に落とされても明けぬ夜はない
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「あ、お姉ちゃん!」
アルマンダインの元にいく途中で声を掛けられた。声の方を向くとこちらに走って側に寄ってきた一人の少年。
「君は…」
「えへへ」
くりんとした大きな目で私たちを見上げる少年はあのアクゼリュスにいた少年、ジョンだった。
「君はアクゼリュスの……無事、だったの?」
「うん。気付いたら、父ちゃんや街のみんなと一緒にこの街の近くにいたんだ」
父ちゃんと……と言うことはパイロープさんも無事に助かったという事、なのかな。けどその姿は見当たらない。ジョンにお父さんは何処?と問えば少し表情が暗くなる。
「父ちゃん、足に酷い怪我しちゃってまだ治らなんだ」
小さな診療所で入院しているという。ならこの子は一人で?いや、ミリアムさんも無事にケセドニアに着いたはず。まだ再会できてない?それを聞くに聞けなくて困ってしまう。
「ですがどうして私たちに声を掛けたのですか?」
そういえばと言った感じでジェイドがジョンに訊ねる。いくらアクゼリュスで少し話をしているとはいえ声を掛けてきたのか。たまたま見掛けたから声を掛けてきたのかな。でも用もないのに?
「マルクトの兵士さんに聞いたの。おいらたちを助けてくれたのはアクゼリュスに、きゅうえん?に来てくれたマルクト軍の女の人だって」
だからそれがお姉ちゃんのことだと思ったんだ。とジョンは言う。あの街にマルクト軍人は私とジェイドしか来ていなくて、そして女と聞いて私だと思った、と。
「ありがとう、おいらたちを助けてくれて」
「でも……私は……」
街は救えなかった。本当は助けようと思えば助けられたのに。判断を誤った。ルークとイオンを扉へと近付けさせなければ何とかなると思っていたのだから。無邪気に素直に礼を述べるジョンに言葉が詰まる。この子はエンゲーブから来ていたとはいえ、こんな怖い思いをさせてしまったのだから。