28話 その手を汚すのは…誰が為?
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「……ジェイドさん?」
彼の顔を見上げれば、ふっといつもに増して綺麗な笑みを浮かべていた。その笑みよりその言葉の方が私の頭をいっぱいにする。
「あなたが戦うことに反対はしません。ですが、もしまだ人を殺めることが辛いと思うのなら言いなさい」
あなた一人くらいでしたら貸せる胸はありますよ?と。それは一人で辛い思いをするな、泣きたいのなら泣けばいい。側にいてくれる……ってことなのかな。この人はどうしてわかるんだろう。本当は少し泣きたい気分。思い切り大きな声で何かを叫びたい気分。一人でいると何かを考え込んでしまいそうにもなる。そんな事をわかっててくれる。
「ありがとうございます」
今は素直に思える。この人を好きになってよかったと。いつ消えるかわからない命の灯火。もう人を好きにならないと決めた。でも好きになってしまった。だから諦めると再度決心した。その私の思いを幾度となく揺るがす彼を、好きになって本当によかった。いつか来るその時までこの想いは大切にしよう。
「何だか元気が出てきました」
「おや、意外と単純ですねぇ」
よしっと、ガッツポーズのように胸元で拳をぐっと握ればやれやれといった風に肩を竦めるジェイド。そんな彼に失礼ですよ!とびしり指差す。このやり取りも楽しくて仕方ない。
「真咲、何か歌ってくれませんか?」
彼の方から歌ってくれって言ったのは初めてだよね?私自身もそんな気分だったから、はい。と返事して頭に浮かぶ詩を歌う。
――満天の星空の下に私たちはいる
傷付き、膝をつき、頭を垂れても
あなたも私も一人ではない
だから……一人で泣かないで
小さな君が、一人泣くのなら…私は君を包み込もう
私が泣きそうなときはあなたが傍にいて?
これは私が私へと贈る歌。これから起こる止まらぬ悲劇に足を止めないための。私の為すべき事を貫き通す為の自分自身を奮い立たせる歌。