28話 その手を汚すのは…誰が為?
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「それだけではありませんね」
結局はバレてしまう。それだけじゃない。それも理由の一つだけど、全てではない。
「……消えないんです」
両手を見てもただ白いグローブが見えるだけ。付いたわけでもないの朱に染まって見え、その鼻につく独特の臭いが消えない気がして……自分自身が嫌なだけ。
「あなたたちの方は戦闘になったとの事でしたね」
「住民は、先に避難を兵に促しました……私は」
一人残って数人のキムラスカ兵と対峙しました。先ほどのことを隠さずに話す。大まかなことはマルクト兵から聞いているだろうけど、実際に戦ったのは私一人。他の兵士たちには何より住民の安全を優先させた。自分でそうさせたくせに、ダメで逃げたくて怖くて…慣れ始めた血が視界いっぱいに広がって離れない。
「せめてもの、抵抗……ですかね?」
苦笑しか浮かばない。元の世界から持ってきた、持っていた荷物の中にあった買ったばかりのフレグランス。実は香水とかあまり香りの強いものは好きじゃないけど、シトラスとか柑橘系っぽいほんのり甘めの香りなら好き。一個ぐらい持ってなさいと言う友達に進められ買ったもの。
「……気分も紛れるかなって…」
また何も言わない。黙ってたから?まだ人の死に慣れない私に呆れた?怒った?その無言が私を不安にさせる。ううん、彼の一挙一動が私の心を浮上させたり一気に落下させたりする。それだけ、私の中でのジェイドが大きくなっている。忘れたいのに忘れられない。悔しくて辛い。
「明日は戦闘になりそうになったら一兵卒に任せて、あなたは住民の避難を誘導しなさい……」
目を細め表情を険しくする彼に、やっぱりと思い視線だけを地に落とす。
「と言ってもあなたは聞くわけがありませんね」
低かった声音もいつもと同じに戻っていて、へっ?と間抜けな声をあげ目を丸くしてしまう。