28話 その手を汚すのは…誰が為?
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「……じじじジェイドさん?」
この人は一体何がしたいんだろうか……いやはや何を考えてるだろうか。顔を上げた視界には日がとっぷりと暮れたルグニカ平野。目の前にいたはずのジェイドの姿は視界の端。なにがどうなったと聞かれるとどうなんだ。ジェイドの顔は私の耳元にあって吐息が掛かる距離。さらっと、亜麻色の髪は一房肩からずり落ち私の鼻を擽ればいつもの彼の香水の香りがつく。これで固まると言われても無理としか答えられない。
「い、一体……何を?」
「香水……付けてますか?」
そのまま微動だにしない彼に視線だけ向ける。さっきから心臓がバクバクと鳴っていてうるさい。何度も触れるくらい側に寄ったこともあるし、抱きついてしまったこともある。それでも慣れなくて恥ずかしいというか……この人は私をどうしたいんだろうか。
好きだと自覚してしまったらしまったで困る。こんなに動悸が激しいとジェイドに聞こえるんじゃないかって思って落ち着かない。気付いて……気付かないで……思ってはいけないジレンマの嵐に飲まれてしまいそう。そんな気持ちを隠すかのように…は、はい。少しだけ。と一歩下がって返事をする。
「珍しいですね」
「えって、それは……」
今日ほどこの人のあざとさを恨むことはない。香水をつけたと言っても本当に軽く宙に吹き付けたのを全身に纏わせる程度で相当近くに寄らないと香らない筈なのに。気付かれて理由を問われてしまっては隠しておけないか。隠そうとしてもすぐにバレてしまうだろう……なら素直に話しておくべきか。
「……血の、臭いが消えなくて……血生臭いとエンゲーブの人たちが、不安がるって思って……」
斬らなければ私が斬られていた。人を斬るという覚悟はとうにある。それはこの旅の仲間や戦い慣れしている他の兵士たちとだけなら多少の血の臭いは構いはしない。けど一般人が一緒なら話は別だ。ちょっとしたことにも敏感になっているから……と言うこともあった。