19話 彼に捧げる夜想曲
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「…気持ちは分かるけど。でも、ユリアシティで眠っているルークを否定するようなことは言わないで」
「えっ?」
私の言葉にナタリアは何の事?だといったように首を傾げる。目先のことに囚われてしまい肝心なことは見えていない。仕方ないといえばそうなんだけど。でも、私は少しムッとしてしまい、睨みつけるようにナタリアを見る。こんな私を初めて見るナタリアが息を呑んだのが分かる。
「アッシュを『ルーク』って呼んだでしょ?なら、ユリアシティで眠っている『ルーク』は何て呼べばいいの?」
「――っ!!」
今気付いたようにハッとして口元を押さえる。
ごめんね、ナタリア。どっちが本物とかそんなのどうでもいいの。そんなことはどうでもいいの。
「ルークは"今"生きてるの…どんな命でも、たった一つの命だよ」
私の言葉に絶句してしまったナタリア。前を歩くアッシュにも聞こえているだろう。でも、私は間違ってるとは思わない。だから謝らない。謝ることは出来ない。人が人の命を否定するなんて許される行為ではない。人に命を簡単に天秤に掛けるのは嫌。そんなのヴァンがしていることと変わらないから。
「…そう、ですわね。ごめんなさい」
ナタリアのいいところは素直なところ。俯いてしまった彼女の頭を二、三度撫でてあげる。ナタリアのほうが背が高いから変な光景だけどね。私たちはタルタロスに戻ってベルケンドの西にあるワイヨン鏡窟に向かっていた。辿り着くまで数日を要すらしく、その夜…私は寝付けなくて甲板にいた。体調が良いわけではないけど気晴らしに剣の練習をする。
「…おい」
しばらく素振りをしていると後ろから声を掛けられ振り向く。
「どうしたの、アッシュ?」
アッシュは長い赤い髪を風で揺らしながらこちらに歩いてくる。相変わらず難しそうと言うかなんて言うか…眉を寄せていた。顔を見る度に思うけど疲れないのかな?