16話 叶わぬ願い
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「…ヴァン!!」
「ふっ、来たのか。瘴気が充満しているここはお前にとっては毒でしかないのに…しかし、もう遅い」
私の怒りを込めて名を呼べば、ヴァンはゆっくりと私を見て笑った…あの夢のように口角を上げて。ギリっと奥歯を噛み締める。自分の不甲斐なさが悔しくてたまらない。やっぱり間に合わなかった…アクゼリュスは崩落する――なら今の私に出来ることは!!
「――時を紡ぐ者どもよ 我が声を聞き、我が声に答えよ」
右手に杖を召喚していつかのように言葉を紡ぎ始める。崩落が防げなかったのなら、せめてアクゼリュスの人達を安全な所に避難させる。ライガクイーンの時のように。上手くいく自信はないけど、そんなことを言っている場合じゃない。やらなきゃいけないいんだ。
「この地に住みし者達を 砂漠の街………」
言葉を紡ぎながら東の地の砂漠の街を頭に浮かべる。ここからならセントビナーのほうが近いのは分かってるけど、ケセドニアは大きな街で両国の国境沿い…多くの民を送るなら両国の流通も行き通っているケセドニアのほうがいいだろうし、アスターも避難民を悪いようにはしないはず。
ざしゅっ!! ここまで詠唱したとき、腹部に激痛が走った。体が倒れそうになるのを杖を地面につき必死に堪えて前を見れば、ヴァンは剣を手にしていて、それは血で汚れていた。ヴァンが私を斬りつけたのだ。
「…かはっ」
喉の奥が熱い。口内は鉄の味がした…唇の端からは血が滴る。斬られた腹は痛い、血が逆流する喉は苦しい…けど、ここで詠唱を止めるわけにはいかない。
「…砂漠の街へと導かん」
痛みを耐えて杖を振りかざす。私の周りに浮かぶ光を手の動くままに杖で触れる。触れた光は形を変え私の周りに浮かぶ。
「我が名に於いて命じる 我が名は"真咲" 千里の力を持つ者なり!!」
足にしっかり踏ん張り、力を振り絞って杖を地面に打ちつける。魔法陣に形を変えた光は私の周りから四方八方に上空へと散っていく。