第一章 イタチの里帰り その一
イタチは細い竹串を持ち上げ、串の末端に刺されていた緑色の団子を一口で食べた。
鬼鮫は楽しそうな顔でイタチを見つめていた。
団子屋さんを訪ねることはいつも良い考えだった。無論、鬼鮫は特に団子が好きなわけではない。ただ団子屋はイタチにとって座ってくつろげる数少ない場所の一つであり、鬼鮫はそれが好きだった。
イタチは大きな団子の玉を一口で食べ、それを素早く優雅に丸呑みしようと、鬼鮫はそのしぐさが好きだった。 知り合ってから四年か五年が経ち、十三歳か十四歳だったその時の少年は、もはや立派な青年になっていたが、いまだに団子は手放ししない。イタチは子どものように団子が大好きだった。安心して座っているのは今のごく一瞬かもしれないが、鬼鮫はそれだけでも喜ばしかった。
鬼鮫も手前の団子を一口かじった。
これは認めないといけない…
イタチのゆう通り…
この店の団子は実に美味しい…
イタチは静かにお茶をすすり、湯のみを下ろしながらささやくように言った。
「鬼鮫、振り向くな。俺たちは監視されている」
鬼鮫は白い歯を輝かせ、ニヤッと微笑んだ。
自分らはすでに疑惑を引き起こしているのですね…
それは早い…
まあ、木の葉の連中だから、気づきはこんなに早くてもおかしくないだろう…
そもそも自分らはよそ者だし…
黒い外套を着て、菅笠をかぶっていて、木の葉のど真ん中に在るこの団子屋さんで座っているよそ者で…
鬼鮫は床を見た。
イタチと向かい合って座っており、店の正面玄関を背にしていたから、外は見えなかった。 しかし、床に映る影から推測すると、自分らを監視していたものは、店の正面玄関の柱に寄りかかり、店内に長い影を落としていた。
「カカシ! お前はこんなところにいるとは!」
正面玄関の柱に寄りかかっていた影は身じろいた。
鬼鮫はイタチを見て、ささやいた。
「はたけカカシ?」
イタチはうなずいた。
やはり…
物事は面白くなってきましたね…
二つの影は、玄関の柱に寄りかかっていた影と落ち合った。
「よう、お二人さん!中のよろしいことで…デートですか?」
それはおそらくカカシの声だった。
「何をごちゃごちゃしゃべってるの、このバカ! 私はあんこに団子を頼まれただけよ」
それは若い女の人の声。
「お前こそここで何をしてるんだい、カカシ?」
それは最初にカカシに声をかけていたやつ、重くて低い、若い男の声だった。
鬼鮫はカカシに加わっていた二人のことは知らなかった。だが明らかに、木の葉の連中は店の周りに集まっていた。
自分らを取り囲もうとしているんだろうか…
「俺は?」
カカシはこう答えた。
「俺は死者への供えもんのお菓子を買いに来たんだが…途中で誰かに落ち合おうかと思って…待ってるんだよ…」
カカシの頭の影はわずかに店内の方を向いた。そしてこう続けた。
「サスケを、な」
サスケ…鬼鮫には馴染みのないもう一つの名前。
だがどうやらイタチにはその名前に見覚えがあるようだった。 湯のみを持っていたイタチの指は突然動き、湯のみを下ろした。
「サスケに団子でもご馳走しようかと思って…」
カカシは店の外から大声で言った。
「サスケは甘いものが好きじゃない」
イタチさんはささやくように言った。
サスケ…
誰であれ、そのサスケというやつはカカシともイタチさんとも親しい仲だったようですね…
たしかにイタチさんはカカシと同じ部に所属していたな…
もしかすると、そのサスケという奴は彼らと同属した仲間だったんだろう…
そうなるとサスケもイタチやカカシのように強い忍者に違いない…
鬼鮫はひとりごつのようにうなずいた。
そうか…
だからカカシはそのサスケと他の奴らにここに待ち合わせをしたのだろう…
そしてそれを大声で宣言している…
木の葉の者に囲まれているとイタチと自分に警告しているんですね…
…へえ、怖い…
鬼鮫は含み笑いしながら湯のみを下げた。
「イタチさん、ここでやり合いますか。」
イタチは何かを考え込んでいるようだった。
「ここはだめだ」
それだけを手短に答えた。
ここであいつらとやり合うつもりはなければ、すぐにここを立ち去る方がよいでしょう。
鬼鮫はイタチを見つめた。イタチは外套に手を入れ、数枚の硬貨をテーブルの上に置いた。団子の実際の値段より遥かに多い。 しかし、硬貨から手を引っ込めず、立ち去ろうともしない。菅笠の縁から店の外を見つめ、中指の指先でテーブルを軽く叩き始めた。 行くか残るか迷っているかのように。
ですが、なぜ。
「イタチさん?」
テーブルを叩くイタチの指が突然止まった。
「カカシ!あなたが先にいるなんて珍しいな」
店の外から声がした。
カカシの影より小さな影が店の中に落ちた。
鬼鮫は目の前のことに仰天した。
イタチの手は震えていた。
イタチは指を手のひらに畳み込み、頭を菅笠の下にさらに隠した。
それでも鬼鮫には彼の顔が見えていた。イタチの視線は、店の外に立っていた新来者に密かに釘付けになっていた。
今まで、イタチのこんな姿を見たことがない…
その新来者は故なのか…
鬼鮫は菅笠を少しずらし、イタチの顔を見分した。
目を疑う。
そこで見つけたものは、過去四年間一度も見たことがない。
イタチさんの顔には…
小さな笑顔がある…
悲しい笑顔が…
温かくて、素直な笑顔が…
店の外に来ているのは…誰…
「よう!来たか、サスケ!」
「なんだ、呼び出して…」
「団子はいかが?」
サスケ…
カカシはここで待ち合わせし、待っていると言ったやつ…
イタチとカカシの昔の仲間だろうと自分は推測していたやつ…
そうか、サスケはそいつか…
イタチは会えるために立ち止まっているやつは、そいつ…
それは面白い!
サスケが誰であろうと、即なくともイタチさんと同い年だろうと思っていたが…
鬼鮫には外は見えないが、影と声から判断できる。
影は、他の奴らより小さい。
声は低いがまだ重みがない。
それはせいぜい十二歳か十三歳の少年の声だ…
何ゆえカカシはただの少年を援護として呼び出しているのだろう…
その少年は天才子というものの一人かもしない…
鬼鮫はイタチとカカシの影に目を向けた。
確かに、木の葉は天才子に事欠かない…
イタチは徐々に硬貨から手を引っ込め、素早く静かに立ち上がった。
鬼鮫も続いた。
自分らは裏口から出ていくとき、サスケの声は鬼鮫の耳に入った。
「俺は納豆が好きじゃないし、甘いもんが嫌いだぞ…それ知ってるだろう、カカシ!」
鬼鮫は楽しそうな顔でイタチを見つめていた。
団子屋さんを訪ねることはいつも良い考えだった。無論、鬼鮫は特に団子が好きなわけではない。ただ団子屋はイタチにとって座ってくつろげる数少ない場所の一つであり、鬼鮫はそれが好きだった。
イタチは大きな団子の玉を一口で食べ、それを素早く優雅に丸呑みしようと、鬼鮫はそのしぐさが好きだった。 知り合ってから四年か五年が経ち、十三歳か十四歳だったその時の少年は、もはや立派な青年になっていたが、いまだに団子は手放ししない。イタチは子どものように団子が大好きだった。安心して座っているのは今のごく一瞬かもしれないが、鬼鮫はそれだけでも喜ばしかった。
鬼鮫も手前の団子を一口かじった。
これは認めないといけない…
イタチのゆう通り…
この店の団子は実に美味しい…
イタチは静かにお茶をすすり、湯のみを下ろしながらささやくように言った。
「鬼鮫、振り向くな。俺たちは監視されている」
鬼鮫は白い歯を輝かせ、ニヤッと微笑んだ。
自分らはすでに疑惑を引き起こしているのですね…
それは早い…
まあ、木の葉の連中だから、気づきはこんなに早くてもおかしくないだろう…
そもそも自分らはよそ者だし…
黒い外套を着て、菅笠をかぶっていて、木の葉のど真ん中に在るこの団子屋さんで座っているよそ者で…
鬼鮫は床を見た。
イタチと向かい合って座っており、店の正面玄関を背にしていたから、外は見えなかった。 しかし、床に映る影から推測すると、自分らを監視していたものは、店の正面玄関の柱に寄りかかり、店内に長い影を落としていた。
「カカシ! お前はこんなところにいるとは!」
正面玄関の柱に寄りかかっていた影は身じろいた。
鬼鮫はイタチを見て、ささやいた。
「はたけカカシ?」
イタチはうなずいた。
やはり…
物事は面白くなってきましたね…
二つの影は、玄関の柱に寄りかかっていた影と落ち合った。
「よう、お二人さん!中のよろしいことで…デートですか?」
それはおそらくカカシの声だった。
「何をごちゃごちゃしゃべってるの、このバカ! 私はあんこに団子を頼まれただけよ」
それは若い女の人の声。
「お前こそここで何をしてるんだい、カカシ?」
それは最初にカカシに声をかけていたやつ、重くて低い、若い男の声だった。
鬼鮫はカカシに加わっていた二人のことは知らなかった。だが明らかに、木の葉の連中は店の周りに集まっていた。
自分らを取り囲もうとしているんだろうか…
「俺は?」
カカシはこう答えた。
「俺は死者への供えもんのお菓子を買いに来たんだが…途中で誰かに落ち合おうかと思って…待ってるんだよ…」
カカシの頭の影はわずかに店内の方を向いた。そしてこう続けた。
「サスケを、な」
サスケ…鬼鮫には馴染みのないもう一つの名前。
だがどうやらイタチにはその名前に見覚えがあるようだった。 湯のみを持っていたイタチの指は突然動き、湯のみを下ろした。
「サスケに団子でもご馳走しようかと思って…」
カカシは店の外から大声で言った。
「サスケは甘いものが好きじゃない」
イタチさんはささやくように言った。
サスケ…
誰であれ、そのサスケというやつはカカシともイタチさんとも親しい仲だったようですね…
たしかにイタチさんはカカシと同じ部に所属していたな…
もしかすると、そのサスケという奴は彼らと同属した仲間だったんだろう…
そうなるとサスケもイタチやカカシのように強い忍者に違いない…
鬼鮫はひとりごつのようにうなずいた。
そうか…
だからカカシはそのサスケと他の奴らにここに待ち合わせをしたのだろう…
そしてそれを大声で宣言している…
木の葉の者に囲まれているとイタチと自分に警告しているんですね…
…へえ、怖い…
鬼鮫は含み笑いしながら湯のみを下げた。
「イタチさん、ここでやり合いますか。」
イタチは何かを考え込んでいるようだった。
「ここはだめだ」
それだけを手短に答えた。
ここであいつらとやり合うつもりはなければ、すぐにここを立ち去る方がよいでしょう。
鬼鮫はイタチを見つめた。イタチは外套に手を入れ、数枚の硬貨をテーブルの上に置いた。団子の実際の値段より遥かに多い。 しかし、硬貨から手を引っ込めず、立ち去ろうともしない。菅笠の縁から店の外を見つめ、中指の指先でテーブルを軽く叩き始めた。 行くか残るか迷っているかのように。
ですが、なぜ。
「イタチさん?」
テーブルを叩くイタチの指が突然止まった。
「カカシ!あなたが先にいるなんて珍しいな」
店の外から声がした。
カカシの影より小さな影が店の中に落ちた。
鬼鮫は目の前のことに仰天した。
イタチの手は震えていた。
イタチは指を手のひらに畳み込み、頭を菅笠の下にさらに隠した。
それでも鬼鮫には彼の顔が見えていた。イタチの視線は、店の外に立っていた新来者に密かに釘付けになっていた。
今まで、イタチのこんな姿を見たことがない…
その新来者は故なのか…
鬼鮫は菅笠を少しずらし、イタチの顔を見分した。
目を疑う。
そこで見つけたものは、過去四年間一度も見たことがない。
イタチさんの顔には…
小さな笑顔がある…
悲しい笑顔が…
温かくて、素直な笑顔が…
店の外に来ているのは…誰…
「よう!来たか、サスケ!」
「なんだ、呼び出して…」
「団子はいかが?」
サスケ…
カカシはここで待ち合わせし、待っていると言ったやつ…
イタチとカカシの昔の仲間だろうと自分は推測していたやつ…
そうか、サスケはそいつか…
イタチは会えるために立ち止まっているやつは、そいつ…
それは面白い!
サスケが誰であろうと、即なくともイタチさんと同い年だろうと思っていたが…
鬼鮫には外は見えないが、影と声から判断できる。
影は、他の奴らより小さい。
声は低いがまだ重みがない。
それはせいぜい十二歳か十三歳の少年の声だ…
何ゆえカカシはただの少年を援護として呼び出しているのだろう…
その少年は天才子というものの一人かもしない…
鬼鮫はイタチとカカシの影に目を向けた。
確かに、木の葉は天才子に事欠かない…
イタチは徐々に硬貨から手を引っ込め、素早く静かに立ち上がった。
鬼鮫も続いた。
自分らは裏口から出ていくとき、サスケの声は鬼鮫の耳に入った。
「俺は納豆が好きじゃないし、甘いもんが嫌いだぞ…それ知ってるだろう、カカシ!」
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