準密室


『山本さんって歌うまいんですか？』
山｢えー？普通だと思うけどな？｣


そんな会話をしたのが10時過ぎ
カラオケに行こうとなったのが10時半
オフィスの誰も来れないから二人で行き部屋に入ったのが11時

沙南ちゃんと2人で、お互いにお酒の入ったカラオケは、迂闊だった

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『何歌いますか～』
山｢何歌おっかな～｣

部屋に入るとほわほわした顔と声で聞いてくる(名前)ちゃん
部屋にはリモコンがひとつしかないから2人でひとつのを見るしかなくて自然と距離が近くなる

僕としては、好都合


楽しそうに歌う沙南ちゃん
リズムで揺れる度に肩が触れたり離れたりするからそこに意識を集中させてしまうのは男の性だから仕方がない

歌う横顔はやっぱりかわいくて
少しバラード調になると恥ずかしそうにしながらも楽しそうに歌うから一緒に揺れてみたり、

沙南ちゃんの手を握ってみたり


想いを伝えるニュアンスの歌詞の時にこっちを向いて歌ったり
それ僕に向かって言ってるの？ねえ？


『山本さんって歌上手ですね！』
『えー声綺麗！伊沢さんにLINEしよ～』
『このアーティスト私も好きです！確か川上さんも好きですよ！LINEしよ～』
『これ歌詞当て企画に使えそうじゃないですか？福良さんにLINEしよ～』


僕が歌ったりしてる合間に僕に話しかけてはすぐクイズノックのメンバーに知らせたがる沙南ちゃん


山｢沙南ちゃんも声綺麗じゃん｣
『ほんとに？うれしーな、あ、伊沢さんからLINEきた～楽しんでる～ですって！』
山｢ほんとだ！楽しんでる？｣
『それはもうとても！』


嬉しそうに画面を見せてくれる沙南ちゃん
満面の笑みで楽しいと言ってくれるのはとても嬉しいけどそんな至近距離で微笑まれたら、ねえ？


沙南ちゃんが今歌っているのは切ない片想いの歌
今の俺そっくりだな、なんて考えながら聞いていると


『鈍感野郎、好きだぞ』


横の沙南ちゃんを見ると真っ直ぐ目が合う
わかってるよこれは歌詞の一部でしょ？

でも、なんでそんなに寂しそうな目で俺を見るの？


これは、期待してもいいやつ？


山｢目合っちゃったね、？｣
『合っちゃいましたね？』
山｢そういうこと？｣
『なにがですか？』


わかりやすくしらばっくれる沙南ちゃん


思わせぶりだなぁ

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