第一節・第一部『異世界魔王降臨!?捕食者と被捕食者』
次の日。
窓の外では、残酷なほどに明るい朝日が昇りきっていた。
零「……はぁ、やっぱりこの最終回は何度見ても神だな。作画担当に感謝しかねぇわ」
淹れたてのコーヒーの香りが漂うリビング。
零はタブレットを片手に、徹夜明けの心地よい疲労感とアニメの余韻に浸っていた。
その足元には、一晩中「強制オタク合宿」という名の精神変革プログラムを叩き込まれ、身も心もボロ雑巾のようになったクルルが転がっている。
「……お前……マジで鬼……いや、『魔王』だわ……。脳内が、萌えと友情と……正義の押し売りで、ゲロが出そうだぜ……」
零「そう褒めるなよ。照れるだろ?」
零はカップを口に運び、中性的な唇に満足げな笑みを浮かべた。その軽口に、クルルは縛られたままの首をギギギ……と軋ませ、下から這いずるような視線を零へと向けた。
その瞳には、天才を自称する己が完膚なきまでに叩き潰された屈辱。そして、自分の演算を遥かに凌駕する未知の検体を見つけた狂気的な喜び。それらが混ざり合った、どろりとした執着が渦巻いている。
「クッ……ククッ。一晩中、お前の挙動を横目でスキャンさせてもらったが……ようやく、合点がいったぜぇ。道理で、俺様の
零「あ?」
「鷹柴 零……。……お前、女だな」
核心を突く言葉。だが、零は動じなかった。
コーヒーを飲み干し、空になったカップをテーブルに置くと、獲物を見下ろすような冷めた視線でクルルを射抜く。
零「今更かよ。ま、俺が男だろうが女だろうが関係ねえ。お前は負けた。俺が『勝者』であり『飼い主』。お前は俺に従うだけの『ペット』なんだよ。違うか?」
フッと不敵に笑う零。
その傲慢な態度に、クルルが怒り狂うかと思いきや——予想に反して、その喉の奥から震えるような笑い声を漏らした。
「ク〜ックックックッ…!面白ぇ!!たかが地球人のメスが、俺様をここまでコケにしやがって……!あぁ、堪んねぇなぁ……ッ!!」
拘束されたまま、クルルが低く、愉悦に満ちた声を出す。
その声には、自分を支配した零への激しい「憎悪」と、同時にその圧倒的な暴力的なまでの美しさに魅入られた「歪んだ愛」が、分かち難く混ざり合っていた。
「その余裕、いつまで続くか……。骨の髄まで、その遺伝子の末端まで解析して……俺様の
《——告。個体名:クルル曹長のマスターに対する『執着パラメータ』が測定不能域まで上昇。……憎悪を燃料とした異常な好意、及び支配欲求を検知しました。警戒レベルを最大に引き上げます》
大賢者の冷静な警告が脳内に響く。だが、零はその不穏な報告を聞いてもなお、楽しげに口角を上げた。
零「へぇ……あのアニメ100本ノックに耐えて、まだそんな元気があるのか。いいぜ、曹長。……あんたのその『愛憎』、俺が全部受け止めてやるよ」
零は再び、床に転がるクルルの前にゆっくりと腰を落とした。
指先で、クルルの顎をクイッと強引に持ち上げる。
魔王の如き冷徹な支配者の瞳。
そして、お気に入りの「推しキャラ」をじっくりと壊れるまで愛でるような、オタク特有の底知れない熱い眼差し。
零「面白い
二人の間に、日向家の人々には決して見せられない、ドロドロとした濃密で不穏な空気が流れる。
クルルの眼鏡が怪しく光り、零の黒銀の瞳が勝利の悦びに細められた
続