第二節・第一部『勝者の余裕!?最強攻め様、爆誕!!』
翌朝。魔王城(ガンダム邸)のリビング。
昨夜の「ハチミツ事件」による動悸と、得体の知れない熱のせいで軽い寝不足に陥った零が、フラフラとした足取りで食卓についた。
零「……おい。シルバ。ブラックコーヒー………死ぬほど濃いめで頼む」
「御意、マスター。……ところで昨夜、私の休眠中に不浄な鼠が入り込んだ形跡を検知しましたが…マスター、何か心当たりは?」
シルバの銀の瞳が、静かに、だが獲物を射抜くような鋭さで零の唇に向けられる。執事としての演算能力が、主の微かな「変化」を見逃すはずもなかった。
零「……別に、何もねぇよ。寝ぼけてたんじゃねーの、お前」
零が気まずそうに目を逸らした、その瞬間だった。
「ク〜クックック!!ほら、零。まだ喉が痛くねぇか?……俺様特製の『追いハチミツ』だ。たっぷり……注いでやるよォ!!」
隣に滑り込んできたクルル曹長が、信じられないほどの「余裕」を漂わせながら、零のパンにどろりと黄金色のハチミツをぶちまけた。その仕草、その吐息がかかるほどの距離感。昨日までとは明らかに違う、確信に満ちた「勝者のオーラ」を放っている。
零「……ちけぇよ、寄るな。…あとハチミツはもういい」
「ククッ!!……昨日はあんなに『あーん』して欲しがってたのになぁ?喉の奥まで甘くしてやっただろぉ……?」
「「「…………!!」」」
リビングの空気が、一瞬にして絶対零度――マイナス100万度まで急降下した。
持っていた最高級のコーヒーカップを、握力だけで粉砕したのはシルバ。
そして、反射的に愛銃を抜き放つも、あまりの衝撃に膝を突いたのはガルル中尉だった。
「………あーん…………ハッピー………………………………いや、不浄ッ!!不浄だッ!!クルル曹長ぉぉぉッ!!!」
中尉が軍人としての理性をかなぐり捨てて曹長に掴みかかる。その後ろではギロロ伍長もどこから取り出したのか、真っ赤に加熱した銃口を曹長のこめかみへと叩きつけていた。
「クルルッ!!昨夜、……俺たちのあずかり知らぬところで……師に何をしたッ!!貴様のその卑劣な唇を……今すぐ蜂の巣にしてやるッ!!」
「零……貴殿から、曹長の……甘い匂いがする…!あぁ……私の、……私のハッピーな城が、……このドブネズミに汚されたぁぁぁッ!!」
零「おい、伍長!中尉!落ち着けって!!匂いなんてしねーよ!洗顔もしたし、歯磨きもしたっての!!」
零が顔を少し赤に染めつつ逆ギレするが、その「洗顔」「歯磨き」というあまりにも具体的すぎる事後(?)の隠蔽報告が、逆にライバルたちの疑惑を音速で加速させる。
「ク〜クックック……!!吠えてろよ、負け犬共。零の『初めて』を奪ったのは……この俺様なんだよぉ!!!」
「「「………………殺すッ!!!!」」」
曹長の意味深な言葉に、シルバの銀の魔糸、中尉の精密狙撃、伍長の至近距離爆撃が一斉に曹長へと向けられる。朝食のテーブルは一瞬で吹き飛び、リビングは「宇宙規模の嫉妬」による焦土へと化した。
零「………あー、もう!!どいつもこいつもバカかよッ!!」
零は食べかけのハチミツパンを掴んだまま、自分の部屋へと逃げ帰るしかなかった。
自室のドアに背を預け、普段より激しく脈打つ胸を押さえる。曹長に「俺様のもの」だと刻印を押されたような、あの傲慢で甘い感覚。
その余熱に、魔王の心臓は再び小さく、だが確かに鳴り響いていた。
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