このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第一節・第九部『銀のやらかし!?独占欲の暴走の果てに』



零「ふわぁ……眠いのです……クルル。そこに座るのです」

激甘カレーで満たされた零ちゃまが、トロンとした瞳でクルルを指差した。その仕草はあまりに無防備で、抗いがたい魔力に満ちている。



「……ク、ク〜クックック……!!お、俺を……いや、俺様自身が、あんたの『枕』になれってのかよォ……ッ!!」

クルルが震えながら床に座ると、零ちゃまはフリルを揺らし、迷いなくその細い膝の上に頭を預けた。




零「ん。ここ、落ち着くのです。……クルルのカレーの匂い………………好きなのですよ。にぱー☆」
「「「……ッ!!!」」」

クルルの顔面が、これまでの陰湿な人生で一度も見せたことのない濃度で真っ赤に沸騰した。



「…あ……あぁ……死ぬ。……俺様、今、死んでもいいぜェッ!零の……魔王様の柔らかい頭が……俺様の膝にィィィ!!!」

その背後では、銀の執事シルバが形相を変えて絶叫していた。




「……な、ななな……!私の膝ではなく、あんなカエルの膝にッ!!マスター、不潔です! 直ちに除菌デリートをッ!!」

ガルル中尉に至っては、「……ハッピー。だが、……その場所は……私の……ッ!!」と、嫉妬のあまり理解が追いついていない。




零「シルバ、ガルル、うるさいのです。……みー、クルル、そのままなでなでするのですよ」

零ちゃまは、クルルの膝の上で幸せそうに丸まり、深い眠りへと落ちていった。黄色い天才は、鼻血を垂らしながらも、壊れ物を扱うように零の頭を優しく、震える手で撫で続けるのであった。

――それから数時間後。夕日がリビングに長く差し込む頃、ついに「魔王」が帰還する。





零「…………ん…………あー、よく寝た……」


零は、ゆっくりと目を開けた。
視界に映るのは、恍惚とした表情で自分を見下ろすクルルの顔。そして、自分の体が……なぜかフリルまみれのブルーのワンピースに包まれているという戦慄の事実。

その瞬間、脳内にここ数時間の記憶が「超解像度」でフラッシュバックした。





『零ちゃまなのですよー! にぱー☆』
『クルル、……あーん、するのです』
『クルル、そのまま、なでなでするのですよ』





零「……っ、……あ、あ、うわぁあああぁぁっ!!」

零は、弾かれたようにクルルの膝から飛び退いた。
顔面から火が出るどころか、全身の毛穴から蒸気が噴き出すほどの猛烈な羞恥心が、魔王のプライドを粉々に粉砕する。



零「…っ、殺せ!!シルバッ!今すぐ俺を、分子レベルで消滅させろぉぉぉッ!!!」
「……お帰りなさいませ、マスター……いえ、零お嬢様……クルル曹長の膝の寝心地は、いかがでしたか?」
零「違うッ!!あれは……あれはノックの後遺症で……!!俺の意志じゃねぇよ!!」
「ク〜クックック……!嘘つけよォ、零。あんた、寝言で『クルルのカレー……しゅき…』って言ってたぜェ……!!!」
零「言ってねぇぇッ!!言ってねぇよぉぉッ!!」

零は、絶叫をあげ、フリルの裾を振り乱しながら、自分の部屋へと猛ダッシュで逃げ込んだ。

扉の向こうから聞こえるのは、クルルの下卑た笑い声と、ガルルの重苦しい溜息、そしてシルバの「お仕置き、ですね」という冷たい刃の音。


魔王・鷹柴 零。
彼女の「魔王」としての威厳は、この日。
完全に、そして永遠に「クルル枕」という名の墓標の下に埋められたのであった。







6/6ページ
スキ