第一節・第九部『銀のやらかし!?独占欲の暴走の果てに』
零「みー……お腹、空いたのです。クルル、カレーが食べたいのです!」
あまりの緊急事態に、命からがらガンダム邸へと帰還した一行。だが、そんな周囲の動揺などお構いなしに、女帝・零ちゃまの進撃は止まらない。
フリルを揺らし、首をコテンと小首を傾げて告げる。その声は鈴を転がすように可憐だが、向けられた黒銀の視線は冷徹な「命令」そのもの。そう、精神の表層は幼児化していても、その本質にある魔王の「支配権」は微塵も揺らいでいなかった。
「…ク…ク〜クックック……!!零ちゃま…………あぁ、その格好で、その喋り方で俺様に命令するなんてェ……ッ!!」
クルルが鼻血を垂らしながら、吸い寄せられるようにキッチンのコンロに火をつけた。
いつもなら「超激辛」や「嫌がらせ」を隠し味にする彼だが、今の零ちゃまの瞳に宿る『甘いのがいいのです』という無垢な
「待ってろよォ、お嬢様!俺様の秘蔵の、完熟マンゴーとハチミツを100倍濃縮した、宇宙一甘い『ハッピー・カレー』を作ってやるぜェッ!!」
零「……クルル。遅いのです。まだなのです?悪い子にはお仕置きなのですよ。みー」
「ひっ……!!す、すぐ作る!すぐ作るから……その……『みー』をもう一回やってくれェェェッ!(悶絶)」
リビングでは、銀髪の執事シルバが殺意に満ちた羨望を爆発させていた。
「ああ……マスターに、あんなに可愛らしく『みー』と言われるなんて。クルル曹長、貴様……死にたいのですか?その場所、私と代わりなさいッ!!」
やがて完成した、劇薬に近い甘さのカレー。零はそれを一口スプーンですくい、ソファで硬直していたガルル中尉の目の前に差し出した。
零「ガルル。お前も食べるのです!! ……あーん、するのです」
「……れ、零……あぁ、毒……毒だろうと……私は、喰らう………………これが、私の……究極のハッピー…ッ!!」
ガルルが震える口を開け、零ちゃまからの「あーん」を完食。
その瞬間、甘さと萌えの過剰摂取により、紫の軍人は音を立てて後ろに倒れ込み、白目を剥いて昇天した。
零「ふふっ。ガルル、弱すぎなのです。…次は、シルバ。許可するからなでなでするのです!」
「…ッ!! 謹んで、謹んで拝命いたしますうううッ!!(爆速で跪く)」
魔王城(ガンダム邸)は今、「女帝・零ちゃま」という名の、最も甘く、最も残酷な支配下に置かれていた。
その凄惨な(?)光景をリビングの端から眺めていた夏美は、静かに冬樹と共にガンダム邸を後にする。
「ダメだわ、冬樹。……あの家……もう救いようがないわ……」
「それ、元はと言えば姉ちゃんが着せ替えたからだよね……?」
姉弟の乾いたつぶやきだけが、夕暮れの庭に虚しく響いていた。
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