第一節・第九部『銀のやらかし!?独占欲の暴走の果てに』
「ちょっと、零さん!暴れないでってば!男装も格好いいけど、せっかく女の子なんだから、一度くらい、これ着てみなさいよッ!!」
日向家、夏美の部屋。そこは今、全宇宙を震え上がらせた魔王・零にとっての「処刑場」と化していた。
ベッドの上には、夏美が桃華に用意させたパステルカラーの「フリルてんこ盛りワンピース」や、精緻なレースが施された「ヘッドドレス」が、逃げ場を塞ぐように山積みになっている。
零「ま、待て、夏美ちゃん!俺にそんなヒラヒラしたもんは似合わねぇ!呪いか!?精神攻撃か!?智慧之王!シルバ!助けろッ!!」
零は必死に壁際まで後退するが、夏美の瞳に宿る「着せ替え人形」を愛でるような光に当てられ、いつもの覇気が霧散していく。
「シルバさんは外で正座させてるわよ!ほら、このリボン!零さんの茶髪ショートに絶対合うから!」
零「ひっ…!やめろ、それを俺に近づけるな!俺は……俺は魔王だぞ!?宇宙を統べる……ああああっ!!脱がすなッ!自分で脱ぐから、いや、脱がないけど!!」
ガタガタ、ドタバタ。
部屋の外まで響く抵抗の虚しい叫び。
「零さん、足!スカート通すから、そこ通して!桃華ちゃん!モアちゃん!手伝って!」
「は〜い!ってゆーか強制装備?」
「零さん!せっかく用意したんですよ!1度だけでも!!ね!履きましょう!!?(零お姉様の正装とか、冬樹くんの肖像画の横に並べるしかねーだろぉぉぉ!!!)」
零「嫌だッ!膝から下がスースーするのは……嫌だぁああッ!!」
……数十分後。
日向家のリビングには、今か今かと「魔王の真の姿」を待ち構える、欲望に忠実な面々が揃っていた。
「ク〜クックック!零の生足……!!俺様の演算能力で、0.1ミリ単位で網膜に焼き付けてやるぜェ……ッ!!」
クルルが超高性能カメラを構え、ガルル中尉は「……心頭滅却。私は……ハッピーを直視する準備ができている……」と、鼻血を垂らしながら悟りの境地(瞑想)に入っている。
「……あ!出てきたですよ!」
タママが指差した先。
ドアがゆっくりと開き、そこに立っていたのは――淡いブルーのロリータ風ワンピースに身を包み、ショートウルフの髪に大きなリボンを飾られた「鷹柴 零」であった。
零は顔を林檎のように真っ赤に染め、不慣れなスカートの裾を気まずそうに押さえながら、殺意の籠もった低い声で呟いた。
零「……おい。……お前ら、少しでも笑ってみろ。……『
「「「………………(絶句)」」」
余りの破壊力。魔王の鋭い眼光と、フリルの可憐さのギャップが、「究極の萌え」という名の広域殲滅兵器となってリビングを襲撃した。
その瞬間、ガルルが「……ぐはっ!!」と鼻血と共に崩れ落ち、クルルのカメラが無言の高速フラッシュを連発。シルバにいたっては「……あぁ…これぞ、これこそが私の、真のマスター……」と恍惚の表情で跪いた。
零「……夏美ちゃん……俺、もう、帰っていいかな……」
「駄目」
無慈悲なる即答。
魔王・零、人生最大の敗北を喫した瞬間であった。
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