第一節・第九部『銀のやらかし!?独占欲の暴走の果てに』
「ク〜クックック……!見ろよォ、この
魔王城(ガンダム邸)のリビング。
先日の決戦以来、クルル曹長は勝ち誇った顔で零の背中にコアラのごとくしがみついて離れない。零の体温を、その魔力の残滓を、特権的に享受するその姿は、他の追随を許さない「勝利者」のそれだった。
零「おい、重いぞ。曹長、そろそろ降りろ。腰にくる」
零が呆れ顔で促すが、クルルはさらに深く顔を埋める。
「やだねェ……零の熱が引くまで、俺様はここを動かねぇぜェ?それに、また名前で呼んでくれよ。魔王様ァ……」
陰湿な悦びに浸る黄色い悪魔。その光景を、部屋の隅で見ていたシルバの銀の瞳が、絶対零度の殺意を帯びて凍りついた。
「……クルル曹長。度を超えた不敬は、その存在の消去に値します」
シルバが音もなく、零の目の前に跪いた。差し出されたトレイの上の珈琲は、主への忠誠ではなく、内側から溢れ出す「嫉妬」という名の猛毒で震えている。
「……マスター。あまりにも、あまりにもこの黄色いバカを甘やかしすぎです!この私の演算能力を、私の魂を差し置いて!このような不潔な個体に『
零「いや、シルバ。あれは緊急事態だったし、お前の演算も使ってたろ――」
「黙りなさいッ!!」
シルバが弾かれたように立ち上がり、咆哮した。
その絶叫は、折しも買い物から戻り、扉を開けたばかりのガルル小隊、ケロロ小隊、そしてお裾分けを手に訪れた日向姉弟の鼓膜をも貫いた。
「いくらマスターの『推し』だからと言って!この……か弱い、うら若き『乙女』である鷹柴零様の、柔らかな背中に!!こんなドブネズミのような
カラン、と零の手からスマホが滑り落ちた。
リビングを支配したのは、全宇宙の終焉よりも重く、冷たい沈黙。
「……………え…………いま、シルバさん……なんて?」
夏美が、手に持っていた差し入れの袋を力なく落とす。
「……うらわかき……おとめ……?」
軍人としての全思考回路がショートしたガルル中尉が、魂の抜けた顔で呟く。
「……零さん……女性、だったの……?」
冬樹が驚愕に目を見開く中、背中のクルルだけが、すべてを理解してガタガタと震え出した。
「……ク〜クックック!!……シルバ、お前…!ついにバラしやがったなああぁぁぁッ!!」
知っていた優越感と、独占権が消滅した絶望が混ざり合い、クルルの表情は奇怪に歪む。
対する零は、主を売った銀髪の執事を、ただ無感動に見つめていた。
その瞳に、もはや光は無い。
零「……おい、シルバ……お前、自粛しろって言っただろ……」
零の低く、地を這うような声。
シルバはハッと我に返ったように数歩下がり、自らの失態の大きさに銀の瞳を泳がせた。
《––告。マスターの性別隠蔽工作、および社会的擬態プログラム……
脳内での智慧之王の無慈悲な宣告。
シルバは震える膝を突き、再び絶望の面持ちで跪いた。
「………………申し訳ございません、マスター……『嫉妬』というバグが、私の自制心を凌駕いたしました。……これにて、性別の隠蔽……失敗です」
零「……お前…一回、マジで初期化してこい」
魔王の冷徹な宣告が響く中、リビングには「女」と判明した零を巡る、更なる地獄のような争奪戦の火蓋が切られようとしていた。
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