第一節・第八部『迫る!神の審判!!–魔王と参謀の究極進化!!–』



「……私の城を……零を……汚すなァァッ!!」


ガルルの瞳が、執着と狂愛に濁った光を放ち、肉体のリミッターを火花と共に焼き切った。超高速移動による残像が、白い粛清官たちを物理法則を無視した速度で翻弄する。
だが、敵の指揮官は眉一つ動かさず、冷酷に指を鳴らした。



「……時間の加速アクセル。……消えろ、旧式の軍人」

死角から放たれた不可視の光刃。万事休す――。その刹那、重厚な爆音を響かせて赤い影が割り込んだ。




「―――兄貴ッ!前だけ見ていろ!背後はこの俺……魔王の近衛、ギロロが守るッ!!」


浴衣を脱ぎ捨て、鋼のような筋肉を剥き出しにしたギロロが盾となり、その肉体で強襲を受け止める。鮮血が舞うが、その瞳に退く色は微塵もない。




「……フン、かすり傷だ。弟よ……俺は、魔王に認められた『番犬』だぞッ!!」


兄弟の意地が、神の如き静止した時間を強引に押し留める。だが、本命の牙は別の場所で研がれていた。




「ク〜クックック……!あのアホ共、熱苦しいねぇ………あぁ、腹が立つ。……零、見てろよ……あんたの脳内に、俺様以外の不純物が入り込む余地なんて……1ビットも残してやらねぇからよおおおッ!!」


クルルが自らの神経系を、魔王城の全サーバーと直結させた。
その負荷は凄まじく、彼の黄色い体からは激しい火花が散り、鼻からは鮮血が滴り落ちる。




「…俺様の命ごと、こいつらの時間を逆流させてやるぜぇ……ッ!!全システム、オーバーライドオオッ!!」
零「っ……何やってんだ!あの馬鹿!!おい、シルバ!!!」
《――告。ハッキング完了まで残り120秒。個体名:ガルルの極限覚醒、およびギロロの連携を確認。……続いて、個体名:クルルの精神暴走オーバーロードを検知》
零「やめろ、曹長!焼き切れるぞ!!」


零が叫ぶが、クルルは狂ったような悦悦たる笑みを浮かべたまま止まらない。




「……構わねぇよ、魔王様……。あんたに忘れられるくらいなら、……あんたの記憶の中で、一番深く、痛く刻まれて死ぬ方が……『ハッピー』だぜぇ……ッ!!」
零「……この、大馬鹿野郎が!!」


零は、襲いかかる粛清官たちを「万能糸」の一閃で薙ぎ払い、クルルの元へ一歩踏み出した。そのまま、限界を超えて崩れ落ちそうになる彼の細い肩を、背後から強く、壊れ物を抱くように抱きしめる。




零「――勝手に死ぬなんて、許可してねぇぞ!!……お前の命も、その捻くれた性格も、全部俺が……全部、俺の物なんだよぉ!!ハッキングを待つ必要なんてねぇ!智慧之王!『暴食者グラトニー』、限定解除!!」


零の背後から、光すら届かない全てを呑み込む漆黒の虚無が出現した。




零「ハッキングが終わらねーなら、この『止まった時間』ごと、敵もろとも喰らい尽くしてやる……ッ!!気味悪りぃ因果律シナリオは、俺が全部……胃袋に収めて消してやんよぉぉぉ!!」


漆黒の渦が、静止した夏祭りの境内に逆巻く。
襲いかかる粛清官たちが、悲鳴を上げる間もなく零が放った「暴食」の深淵に飲み込まれていく。その絶対的な力の前に、神の如き初期化プログラムすら無力に分解されていった。
腕の中で、過負荷に喘ぐクルルが熱っぽい瞳で零を見上げた。




「あぁ……零……。俺様だけの……ま、おう……」


絶望的なエネルギーの奔流の中。零の激しく、力強い鼓動だけが、クルルの耳に世界で一番愛おしい「真実」のリズムを刻んでいた。




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