第一節・第一部『異世界魔王降臨!?捕食者と被捕食者』
怒涛の初日を迎えた次の日の穏やかな昼下がり。
日向ママと夏美からの引越し祝いを持ってきた(中身は高級な洗剤セットと手作りクッキー)冬樹と軍曹。
それを受け取り、零は二人を自宅の居間に招き入れていた。
「いやあ、零殿の家は落ち着くでありますな!録画機の中身も……ムムッ、これはケロン星では未放送の最新アニメ!宝の山であります!」
ケロロは目が円盤のようになり、冬樹も「零さん、さっきのオーパーツの話、もっと聞かせてください!」と、大賢者の知識をフル活用したオカルト談義に身を乗り出している。
そんな平和な空気を切り裂くように、零の脳内に無機質なアラートが響いた。
《報告。個体名『クルル』による、宅内メインサーバーへの再侵入を確認》
零「……ったく、昨日の今日でこれかよ。懲りねぇ奴だな」
《告。物理破壊ではなく、保存データの改竄を目的としています》
零「……あ? 何を狙ってやがる」
零が意識の中で問いかけると、大賢者は即座にクルルの邪悪な思惑をスキャンした。
《推測。カレーレシピ奪取の報復と思われます。対象は、マスターが趣味で収集した数々のアニメ録画データ、及びブルーレイの全アーカイブ。これらを全て、乳幼児向けのアニメ『ぐっすり子守唄・ねんねんころり』に書き換えようと試みています》
零「あいつ……マジで死にてぇみてぇだな」
零の口から漏れたのは、氷のように冷たい呟きだった。
せっかくの休日、趣味のコレクションに手を出すというクルルの「一線」を越えた嫌がらせに、零の逆鱗が触れる。
「あ、あの、零さん……?」
冬樹がその威圧感に顔を引きつらせ、ケロロは持っていたポテトチップスを落としてガタガタと震え出した。
零は瞬時に表情を切り替え、二人に向かってこれ以上ないほどの「満面の笑み」を浮かべる。だが、その瞳の奥は一切笑っていない。
零「悪いな二人とも!ちょっと、害虫駆除の用事ができた。…ゆっくりくつろいでてくれよ!」
「は、はい……行ってらっしゃい……」
「行ってらっしゃいであります……!」
二人が見送る中、零は静かに部屋を出た。その背中からは、昨日の戦闘時をも凌駕する、禍々しいまでの魔王のオーラが立ち昇っている。
バタン、とドアが閉まると、ケロロはへなへなと畳に崩れ落ちた。
「……冬樹殿。やはりあの御仁、工作員なんて生易しいものではないであります。本物の魔王様が降臨されたでありますよぉ……」
「……あはは、否定できないや。あの時の零さんの目、本気だったもん……」
冬樹は苦笑いしながらも、隣の家(自宅)で今まさに「処刑」が始まろうとしているクルルの冥福を祈らざるを得なかった。
→