第一節・第七部『魔王城と銀の崩壊!!』
「ク〜クックック……! 新・魔王城(ガンダム邸)の完成祝いだ! 俺様の特製『超次元激辛カレー』で、日向家ごと火の海にしてやるぜぇ…………ッ!!」
クルルがラボの設備をフル稼働させ、ガンダム邸のキッチンで禍々しい紫色の煙を吹き上げさせる。それを嬉々として手伝う軍曹。
「負けんぞ、曹長! 私はケロン軍最高級の『宙乾物(ドライフード)』を、軍事用高圧釜で煮込んでみせるッ!!」
「素晴らしい調理の技術! 魅せてさしあげましょう!!!」
ガルルが屋根から飛び降り、コンロを最大火力で点火。爆発寸前の圧力がキッチンに充満し、そこに命名によって実体を得たシルバまでが、魔素を注ぎ込み加担する。
「あ、あの……! 皆さん、お料理は楽しく作りましょう……? ってゆーか、一触即発ぅ〜!!?」
モアが震え、冬樹が「零さん、これ絶対やばいよ!」と叫ぶ。
「ちょっと! キッチンを戦場にしないでよッ!!」
夏美が止めに入ろうとしたその時、クルルの隠し味「超高密度スパイス」と、ガルルの「軍事用圧力」が臨界点を超えて衝突した。
ドオオオオオオンッ!!
「ぎゃああああ! 我輩のガンプラがぁぁぁぁぁ!!」
零「…………………っ! 夏美ちゃん、危ない!」
爆風が夏美と冬樹を襲おうとした瞬間、零がその間に割って入った。
……だが、零の愛用する黒パーカーは飛び散ったカレーで無惨に汚れ、大切にしていた「夏美への平穏なおもてなし」は、粉々に砕け散った。
「いたっ……!!?」
そして何より、弾け飛んだ高温のカレーが夏美の指先に当たり、小さな火傷を作った。それを見た瞬間、零の動きがピタリと止まる。
零の背後から立ち昇るオーラは、先ほどの爆発よりも遥かに暗く、底知れないほど禍々しい。
零「……シルバ。……クルル。……ガルル。……軍曹」
零がゆっくりと振り返る。その瞳には、かつてクルルを初めて吊るし上げた時以上の「冷徹な殺意」が宿っていた。
零「……お前ら。……俺が、優しくしすぎたせいか。…………自分たちの
「「「「…………………………ひぃっ!!(絶望)」」」」
零「……シルバ。お前は執事だろうが。なんで一緒になって盛り上がってんだよ。……全員、そこに並べ」
零が指先をスッと動かす。
《――
次の瞬間、シルバ、クルル、ガルル、軍曹の四人は、リビングの天井から一斉に「逆さ吊り」にされた。
「……違うでありますよぉ……我輩もどちらかといえば被害者ぁぁ…………」
「……ク……クククッ……。この感覚……懐かしくて……腰が抜けそうだぜぇ……ッ!!」
「…………零。…………申し訳……ない……。私は、ハッピーに浮かれすぎて……」
「あぁ! マスターの魔王覇気が……!! ついに私にも向けられている……っ!!!」
零「うるせー。……今夜はパーティ中止だ。お前らはそのまま、明日の朝まで『初期・地獄の1000本ノック:魔王の逆襲編』だ。…………夏美ちゃん、冬樹。汚ねぇもん見せて悪かったな。掃除は、こいつらの潜在意識だけで、気合いでやらせるから」
「「う、うん……」」
零は汚れを払うこともせず、凍りつくような笑みを浮かべて、震えるカエル(と執事)を見上げた。
零「……お前ら。……俺を怒らせたらどうなるか、……忘れたなんて言わせねーぞ?」
魔王城の夜は、数カ月ぶりに訪れた「真の静寂」と、逆さ吊りにされた四人の啜り泣き(あるいは法悦)と共に、極めてシリアスに更けていくのであった。
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