第一節・第七部『魔王城と銀の崩壊!!』
零「……はぁ。夏美ちゃんに言われた通り、お前ら自力で直せよ。……シルバ、お前もだぞ」
屋根の吹き飛んだリビングで、零が頭を押さえながら呆れたように指示を出す。
「……御意、マスター。……このシルバ、マスターの聖域を損なった罪、この『トンカチ』と『ノコギリ』に魂を込めて償いましょう……ッ!」
銀髪銀眼の超絶美形執事が、どこかのホームセンターで買った安っぽい工具を、伝説の聖剣でも扱うかのような真剣な面持ちで握りしめる。
「ク〜クックック……!ただ直すだけじゃ面白くねぇ。俺様のナノマシン技術と、中尉の軍事用装甲板を組み合わせて……最強の『城』をリビルドしてやるぜぇ……ッ!!」
「……あぁ。……零。貴殿が安眠できるよう、外壁はすべて『ガンダリウム合金相当』の多層装甲にする。……デザインは、貴殿の好きなあのモビルスーツを参考にさせてもらおう」
零「…………え。待て、お前ら。嫌な予感が――」
数時間後。
「魔王城」の修復作業が完了した。……が、そこには「実物大(1/1スケール)の『初期ガンダム』の頭部が、屋根から突き出したようなシュールすぎる豪邸がそびえ立っていた。
「……何よ、これええええッ!!」
隣から様子を見に来た夏美が、開いた口が塞がらない状態で絶叫する。
「…………夏美様。……これが、我々の『誠意(オタクの情熱)』を具現化した姿でございます!」
ペンキで汚れた燕尾服のまま、シルバが誇らしげに胸を張る。その銀の瞳には、かつての冷酷な悪魔の面影はなく、ただ「完璧な推し活」を遂げた達成感が宿っていた。
「零さん……やっぱりこの子たちを甘やかしすぎよ!!……家が……家が完全に『秋葉原のランドマーク』みたいになってるじゃないッ!!」
零「……いや、俺も止めたんだよ?せっかくやるなら『FREEDOM』とか『ウイングカスタムZERO』の方が映えるだろって。……でもこいつら、ガンプラの話になると『歴史的価値は投票で決める!』とか言って、魔王の命令すら聞かねーんだもん」
「論点、そこじゃありませんッッッ!!!!」
零は、夕日に黄金色に輝くガンダムの角(アンテナ)を見上げ、諦めたようにポテトチップスを口に運んだ。
初期の「恐怖と暴力による支配」はどこへやら。
そこにあるのは、愛すべき「推し」たちを振り回し、そして全力で振り回され続ける、「世界一苦労人の魔王様」の賑やかな日常であった。
《――告。マスター。この外装変更により、観光客が300%増加すると予測されます。……「聖地巡礼」の対応は、シルバおよびケロン軍の「近衛兵」たちに任せますか?》
零「あぁ……。入場料でも取って、新作ガンプラの軍資金にするかぁ…」
魔王城のガンダムの瞳が、まるで零の新たな野望に応えるかのように、怪しくも力強く発光した。
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