第一節・第七部『魔王城と銀の崩壊!!』


「……やっぱり!!シルバさんは宇宙人……それも、高次元の霊的エネルギー体(悪魔)なんだね!!この装置の針が振り切れてるよ!!」

前回、夕方に訪れた冬樹だったが、どうしても諦めきれずに一度帰宅。持ち出してきたのは、クルルのガラクタを改造した『アンチ・バリア対抗装置(改)』だった。それがシルバの「自粛」という名の薄い膜を、強引に剥ぎ取ろうと高周波を放つ。


「…………っ!ふ、冬樹様……!!それは、ただの……加湿器でございます……。私の魔素エネルギーに反応して……爆発する恐れが……!!」

シルバがガンプラのランナーを口に咥えたまま、必死に装置を押し戻そうとしたその時。装置から放たれた過負荷のノイズが、シルバの「自粛リミッター」を物理的に焼き切った。



「……く、くふふ……。おのれ、低俗な機械風情があああぁぁッ!!」



ドオオオオオオンッ!!




シルバが反射的に放った「神速の防御ディフェンス」の衝撃波。日向冬樹を傷つけることこそ回避したものの、逃げ場のなくなったエネルギーは上方へと突き抜け、魔王城の屋根と壁の一部を見事に空の彼方へ吹き飛ばした。




「……わぁ……星空が綺麗だね、零さん!」
零「…………冬樹…………現実逃避してんじゃねーよ。お前のせいだぞ」

吹き抜けになったリビングで、零が遠い目をしてポテトチップスを口に運ぶ。
そこへ――。



「………………アンタたち、…………いい加減に…………しなさいよおおおおおッ!!」

地獄の底から響くような声と共に、掃除機を『ルシファースピア』のごとく構えた夏美が、崩れた壁の隙間から突入エントリーしてきた。その背後には、恐怖で白目を剥いたボケガエル(軍曹)と赤だるま(ギロロ)が引きずられている。どうやら先ほどの爆発の余波を、もろに食らっていたらしい。




「零さんも!シルバさんも!ガルルさんもクルルも! …………冬樹を危ない目に合わせた上に、家を壊す(日向家まで被害が及ぶ)なんて……万死に値するわよッ!!」
「「「「「……………ひっ!!(一斉正座)」」」」」


数分後。
屋根の消えたリビングで、銀髪の超絶イケメン執事、紫の精鋭軍人、黄色の天才、気絶した蛙二匹、そして我らが魔王様・零が、一列に並んで正座(放置)させられていた。




零「……シルバ。お前、さっき『私はただのコスプレ愛好家』って言わなかったか?」

夏美の怒声を聞き流しながら、零が小声でシルバに囁く。



「……マスター……あぁ、夏美様のこの……魂を揺さぶる怒号……これこそが、これこそが、この世界の真理……私は……今、最高に『馴染んで』おります……ッ!!!(恍惚)」

シルバの銀の瞳には、かつての冷徹さは微塵もなく、日向家の日常に完全に毒された「悦び」が宿っていた。

その横で、クルルが「……クク……。魔王城が、……ただの青空教室になっちまったぜぇ……」と乾いた笑いをもらし、ガルルが「…………規律…………。私の規律は、……夏美殿の掃除機の前で砕け散った……」と深い悟りを開いている。
零は、あまりにも綺麗な星空を見上げながら、深い溜息をついた。




零「…………シルバ。……いや、智慧之王。……俺、ここに来た時は、もっとこう……カッコいい魔王をやってたはずだよな?」
《――過去ログを照合。……はい。当時のマスターは、大変クールで、無慈悲で。今とは似ても似つきません。……これもすべて、「ハッピー」という名のカオスを許容した代償ですね》
零「……うるせーよ」


魔王城の夜は、説教の熱気と、カエルたちのすすり泣き、そしてシルバの「新たな覚醒」と共に、更けていくのであった。


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