第一節・第六部『魔王城、爆誕!!!そして現れる銀の守護者!!』
「掃除なら我輩に任せるであります! 日向家で培った熟練の清掃技能(スキル)をお見せするであります!!!」
「ク〜クックック……!!! 掃除なんて原始的なマネしてんじゃねぇよ! 俺様の特製ナノマシン『クリーン・スイーパー』を解き放てば、家ごと原子レベルでピカピカにしてやるぜぇ……ッ!!」
掃除用具で重武装した軍曹に対し、クルルが狂ったように端末を叩く。すると、リビングの壁や床に微細な銀色の霧が広がり、汚れどころか壁の塗装まで削り取らんばかりの勢いで侵食を開始した。
「甘いな、曹長!!! 掃除とは、戦線維持そのものだッ!! ガルル小隊、
ガルルの号令と共に、窓からゾルルやトロロが完全装備でラペリング降下。高圧洗浄機という名の水分噴射兵器を四方にぶっ放し、日向家の庭まで水浸しにしながら強引な「広域洗浄」を敢行していく。
「ぎゃああああ! 我輩のガンプラがナノマシンに食われるでありますぅぅ!!」
余波でコレクションが危機に瀕し、軍曹が泣き叫ぶカオスな戦場。そこへ、冷徹な銀の光を纏ったシルバが音もなく割り込んだ。
「…………目障りですね。マスターの聖域をこれ以上汚す不届き者は、万死に値します。……消えなさい」
シルバが指を鳴らし、空間ごと「排除」しようとした、その時だった。
零「――おい。シルバ、やめろ」
背後から響いたのは、零の低く、少し呆れたような声。
シルバはピタリと動きを止め、驚愕に目を見開いて振り返った。
「……マスター。ですが、この者たちは貴方の城を汚し……」
零「それでいいんだよ。こいつらはこういう奴らなんだ。多少の事なら俺達でカバーしてやりゃあいいだろ? それにシルバ。お前、さっきからこいつらをイジメすぎだぞ。……少しは『自粛』しろ」
「………………………………………自、粛……? 私が、マスターの不利益を排除すること自体が……いじめ、だと……?」
零はソファに座ったまま、スマホを置いてシルバを真っ直ぐに見据えた。
「あんなバカ蛙共だけどさ、俺にとっては大事な……あー……なんていうか、『推し』なんだよ。お前なら分かるだろ?こういうバカ騒ぎがこの世界の醍醐味なんだわ。お前が完璧すぎてこいつらの出番を全部奪っちまうのは、俺としても面白くねぇんだよ。……分かったか?」
その言葉は、シルバにとってハルマゲドン以上の衝撃だった。
「……マスターが…………彼らを…………。そして、私の完璧さが、マスターの『楽しみ』を損なっていた…………ッ!!?」
シルバはガタガタと震えだし、その場に崩れ落ちて項垂れた。
「……あぁ、なんという不覚……。このシルバ、マスターの御心を読み違えるとは……万死……!!! 私は、銀河の果てで自害(再起動)すべきです……っ!!」
零「いや、死ぬなよ!!? 掃除の続きを、こいつらの邪魔しない程度に手伝ってやれって言ってんだよ!!!」
一方、零の「推し」発言を耳にしたカエルたちは、別の意味で震え上がっていた。
「…………零殿…………。今、我輩たちのことを『大事な推し』と言ったでありますか……?」
「………………俺様、……魔王様に……そんな風に思われてたのかよぉ…………!!!」
掃除を放り出し、感動で目を潤ませる三匹(と背景の小隊員)
主の説教に打ちのめされる銀の執事と、魔王の慈悲に蕩けるカエルたち。
魔王城の大掃除は、もはや「誰が一番零に愛されているか」を確認し合う、極めて暑苦しい精神的闘争へと変貌を遂げたのであった。
続