第一節・第六部『魔王城、爆誕!!!そして現れる銀の守護者!!』
零が「ちょっと出るわ。着いてきたら殺す」と、秋葉原的ショップへの遠征ショッピング(気晴らし)に出かけて数時間。「魔王城」のリビングでは、一触即発の空気が流れていた。
「いいか? 曹長殿、軍曹殿。この城の最高警備責任者は私だ。……ゆえに、テレビのチャンネル権、および零の隣の座席は、
ガルル中尉が、腕を組んでソファの定位置(零の隣)を占拠し、眼光を鋭く光らせる。
「ク〜クックック……。頭の硬い中尉殿だねぇ。この家のインフラを支えてんのは俺様のサーバーだぜぇ? ……俺様の許可がなきゃ、お前の好きなガンプラ解説動画も映らねぇよ」
クルルがニヤニヤしながら、手元の端末でリビングの照明を不気味な紫色に変えて煽る。
「待つであります! 我輩こそが零殿の『最初のオタク仲間』! 序列で言えば我輩が長男のようなものでありますッ! だからここは長男が、今夜零殿と観るアニメを選ぶのでありますッ!!」
軍曹がガンプラの箱を盾に叫ぶ。
「「「……譲らん(であります)!!」」」
トイレの掃除当番から、冷蔵庫のプリンの所有権まで、全宇宙を巻き込みかねない不毛な「家事分担&特権争い」が爆発。リビングはガンプラのパーツとカレーの匂いが入り混じる戦場と化した。
それからさらに数時間後。
帰宅した零の目に飛び込んできたのは、リビングで醜い取っ組み合いを繰り広げるカエル三匹の姿だった。
零「……大賢者。こいつら、俺がいないとすぐにこれだ。なんとかならねえか? 毎日これじゃ、俺のスローライフに支障が出るわ」
《――提案。個体名:ガルル、クルル、ケロロの三名は、マスターの慈悲に甘え、自身の立場を履き違えています。……よって、この「魔王城」の秩序を維持するため、物理的な実体を持つ「管理者」の導入を推奨します》
零「管理者? ……ああ、お前の端末か」
《――肯定。現在のこの家のエネルギー供給量なら、私の思考並列体と接続維持する「疑似分体」の形成が可能です。……マスターに代わり、不届き者共を排除し、家事を完璧にこなし、聖域の静寂を守る……。もちろん、実行してよろしいですね?》
零「なんかすげー含みあんじゃん。まあいいけどよ。どんな姿になんの?」
《――告。姿形は自由に変更可能です》
零「マジで!!? え、じゃあさ、『転スラ』のディアブロとかいける? 色違いでさ」
《――了解。ディアブロ・フォームにて
次の瞬間、騒乱の真っ只中にあるリビングの中央で、眩い銀色の光が弾け、収まったその中心に「彼」は立っていた。
床に届かんばかりの長い漆黒の燕尾服を纏った、銀髪銀眼の青年。
シルクのように滑らかな銀の髪、冷徹な知性とマスターへの狂信を宿した双眸。その立ち姿は優雅でありながら、一歩間違えれば世界を滅ぼしかねない圧倒的な「個」の威圧感を放っている。
「…………起動完了。これより、マスターの安眠を妨げる『害虫』の駆除を開始します」
実体化した「
「なっ!? 身体が動かん……っ!!」
「ク、ククッ!? 俺様のハッキングが、一瞬で物理的に弾き返されただとぉ……!?」
「ぎゃああああ! 我輩のガンプラが勝手に異次元へ片付けられていくでありますぅぅ!!」
実体化した大賢者の放つ魔圧――それは魔王・零の影であり、この家そのものの「意志」であった。
「……いいですか、カエル共。この家でマスターに最も近いのは、私なのですよ。……お前たちは、マスターの靴の裏の埃を払う権利すら、今のままでは持ち合わせていません」
大賢者が冷たく言い放つと、掃除機をかけるような手軽さで三匹を廊下へと掃き出し、扉を不可視の結界でロックした。
「お疲れ様です、マスター。珈琲を。そして本日のおすすめアニメをセットいたしました。クフフ……不快な雑音はすべてシャットアウトいたしましたので」
零「……お、おう。サンキュ、大賢者。(お前、実体化すると結構キャラ濃いっていうか、キツいのな……)」
零は、あまりの再現度とディアブロ・フォームの完成度に(やべぇ、本物が俺に跪いてる……最高かよ)と内心限界オタク化していたが、表面上はプレイボーイの余裕を崩さない。大賢者は恭しく一礼し、零の手をそっと取って甲に口づけを落とすような所作を見せた。その動きは、まさに魔王に仕える「原初の悪魔」そのもの。
一方、廊下で固まっていたケロロ、クルル、ガルルの三匹。改めて扉の隙間から「銀の管理人」を観察し、そのあまりの神々しさと「勝てる気がしない」上位存在としての格差に、魂が抜けかけた状態で震えていた。
「れ、零殿……あんな美形の執事まで……。我輩、ガンプラのパーツの細かさくらい、自分の存在がちっぽけに感じるであります……!!」
「……ククッ……ハッキングどころか、存在そのものが『上位プログラム』だぜぇ。最高に嫉妬するぜぇ……!!」
ガルルに至っては、自分の「
零「……マスター。不純な視線が複数。……
銀の瞳が、廊下へ向けてスッと細められ、殺気が物理的な重圧となって三匹を襲う。
零「いや、待て待て! 掃除機かけさせるくらいにしておけって!」
こうして、魔王城には「銀髪銀眼の最強執事」が君臨。
三匹の蛙たちは、零に近づくために、まずこの「鉄壁の守護者(クソデカ感情持ち)」の検閲と調教を通らなければならないという、さらなる地獄の共同生活が幕を開けたのである。
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