第一節・第五部『魔王再臨-絶対恋愛障壁の惨劇(ヒグラシ)-』



「〜っ!!! ……ああ、もういい!! そうだよ! ギャグだよギャグ!! 今のは俺様の最新ギャグプログラムのテストだぜぇぇぇッ!!」

ついに我慢の限界が来たのか、クルルがヤケクソ気味に叫び、モニターを叩きつける。顔を真っ赤にしながら、零の「鈍感バリア」に粉砕されたプライドの破片を必死にかき集めていた。
周囲の憐れみが限界突破する中、その横でガルルが「……零。曹長がギャグだと言うなら、私の『ハッピー』こそが真実リアルだ。今すぐその……『しおちゃん』という甘い呼び名で私を……」と、不気味な熱量を保ったまま零に詰め寄っていく。



零「…………うーん。なんかお前ら、今日はマジで脳みそ腐ってんなぁ。どうしたんだよ?」

零は呆れたように二人を見比べると、大賢者スマホを指先で無造作に弄った。



零「わりぃ、大賢者……。こいつら、なんか変なバグ(勘違い)が深刻化してるみたいだ。……いっそ、今日一日のこいつらの『記憶』、全部消してリセットしてやった方がいいかな? 無かったことにすりゃ、明日からまた普通にガンプラ作れるだろ?」
《――肯定。個体名:クルル曹長、およびガルル中尉の海馬に直接干渉し、本日発生した「恋愛回路の暴走」に関するログを一括消去デリート可能です。……マスター、本当に実行しますか?》
零「? ……まぁ、よし。じゃあ――」
「ちょっと待ちなさいよッ!!」

ラボの扉を蹴り開け、掃除機を武器のように構えて怒り狂う夏美が突入してきた。




「ゲロォ!? な、夏美殿!? どうしてここに……!!?」
「アンタたちが家に来たのは気づいてたわよ! それより零さん!! アンタねぇ! さっきから聞いてれば……ひどすぎるわよ!」
零「え? 何が?」
「何がじゃないわよ! この子たちが必死に! ……まぁ、バカな内容だったけど! 必死に自分の気持ちを零さんにぶつけてるのに!!! それを『無かったこと』にするなんて……。あまりにもコイツらが可哀想でしょッ!!」

夏美の怒声に、クルルとガルルが同時にビクッと肩を震わせる。





「…………夏美殿……貴殿は、私の『ハッピー』を認めてくれるのか……?」
「…………お姉様……っ!!!俺様のこの惨めな敗北を、肯定してくれるってのかよぉ……」
「認めるとかじゃないわよ! 零さんが鈍感すぎて、アンタたちが一生報われないのが目に見えてるから言ってるの!! ……ほら、いつまでもウジウジしてないで、ちゃんと零さんに『分からせて』あげなさいよ!」

夏美の謎の援護射撃に、ラボの空気が一変した。
「分からせる」――その言葉は、とある魔王様の得意分野である。






零「……分からせる? 俺を? ……ああ、なるほど。夏美ちゃん、さてはこいつらに『もっと厳しい修行』をさせろって言いたいんだな?」

零は拳をポンと叩き、一人で納得の表情を浮かべた。




零「いいぜ。記憶消去はやめてやるよ! ……その代わり、お前らのその『変なテンション』を叩き直すために、今夜からさらに地獄の『鬱アニメ・100本ノック』だ!!! ギャグだの好きだの、余計なことを考えられないようにしてやんよ!」
「「「………………」」」


またしても現場に『違う、違う、そうじゃ、そうじゃなーい』のメロディが幻聴となって響き渡る。





「「なんでそうなるんだぁぁぁぁぁ!!!/よぉぉぉぉぉ!!!」」


クルルとガルルの魂の叫びが重なったが、零の「魔王の笑顔」の前では、もはや逃げ場などどこにも存在しなかった。






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