第一節・第四部『紫の来訪者・再来』



「……零。俺に何か出来る事はないだろうか? 貴殿の『檻』の中で、相応しい役割を全うしたい」

数日前までの殺気はどこへやら。膝をつき、縋るような瞳で問いかけるガルルに対し、零はコーヒーの最後の一口を飲み干して、事も無げに言い放った。



零「ん〜?……じゃ、とりあえずガンプラを精巧に作れる技術は磨いといて。軍曹レベルまで到達してくれたら嬉しいぜ」
「承知した!……すまない、軍曹殿。不肖の身ながら、手ほどきをお願いしたい」
「っ!!?……喜んでえぇぇぇぇであります!!!」

鬼の中尉から「教えを請う」と頭を下げられ、ケロロのテンションは銀河の果てまで爆上がりした。何せ、訓練の名目で「他人の金」でガンプラを心ゆくまで作り放題なのだ。まさにウィンウィンの関係である。



「良かったですね!おじ様!ってゆーか、共同作業?」

モアがパチパチと手を叩き、ギロロも「兄貴が幸せなら、それでいいのかもしれん……。共にマスターを支えよう、兄貴!」と独自の騎士道精神で納得。タママも軍曹の嬉しそうな姿に「軍曹さんが光り輝いてるですぅ〜!」と便乗する。
平和(?)が戻ったリビング。だが、ただ一人、モニター越しにその光景を眺め、奥歯を噛み締める黄色い蛙がいた。




「…………チッ…………面白くねぇぜ…………」


クルル曹長である。
一度はラボに戻ったものの、やはり気になって「観察(盗撮)」を続けていたのだ。キーボードを叩く指が、未だかつてない苛立ちで震える。
ガルルの純粋すぎる狂気が、零の「お気に入り」という特等席を土足で荒らし、強引に奪い取っていくのが、死ぬほど癪に触った。



「ク〜クックック……あのアホ中尉、完全にイカれやがって。……あぁ、腹が立つ。…………アイツの脳内、全部『愛と勇気の使者アンパンマン』に書き換えてやりゃ良かったぜぇ……」

無自覚な独占欲と、自覚すらしたくない猛烈な嫉妬。クルルは衝動のままに、大賢者の鉄壁の防御を承知の上で、ありったけの熱量を込めた通信を零のスマホへ叩きつけた。




《――告。個体名:クルル曹長より、緊急性の高い「電脳割り込み」を検知。……メッセージ内容。
【おい、魔王様。その紫のデカブツ、さっさとケロン星に叩き返せ。…………俺様のラボの椅子、空けて待ってんだよ】》

大賢者がわざとらしく、零の脳内に響く音量で読み上げる。



零「あ?珍しく黄色い専用機ペットが拗ねてやがるな。……中尉があまりに俺に懐くから、あいつの専用機としてのプライドがボロボロになったか?(……仕方ねぇ、構ってやるか。あいつ、放置しすぎると、またろくでもねぇ事しそうだしな)」

零がソファから立ち上がると、一瞬のラグもなく全員がバネ仕掛けのように立ち上がった。もはや「零から一歩も離れてはならない」という強迫観念に近い忠誠心が小隊全体に染み付いている。




「ゲロ?どこに行くでありますか?」
零「あぁ、ちょっと日向家の方にな」
「あぁ!それなら我輩も行くであります!ちょうど、用事があったところでありますよ!」

「僕も行くですぅ〜!」「私もです!」「俺は師を守る近衛だからな!」と、次々に参戦を表明。そして当然のように「何しに行くんだ、零?」とガルルも隣をがっちりキープしてついて来る。



零「……おいおい、大所帯だな。ま、いいか」


こうして、嫉妬に燃えるクルルの待つラボへ、零を筆頭とした「魔王一行」がゾロゾロと大移動を開始した。




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