第一節・第二部『ケロロ小隊「オタク化」計画、始動!!』



嵐のような「24時間耐久・地球侵略アトラクション」の喧騒が一段落し、零は自室のソファに深く身を沈めていた。手元には大賢者が淹れた(ように設定された全自動マシンの)コーヒー。


零「…にしてもよ、大賢者。俺は『地球侵略アトラクション』を見せろって言ったはずなんだけどな。なんであの専用機曹長は、俺の脳内をハックしようなんてズレたことしてたのかねー?」

零の純粋な疑問に、脳内の相棒は即座に、かつ辛辣に応答した。



《問。個体名:クルルの行動原理を解析……失敗。おそらく、知能指数がマスターの基準に達していない低能なせいかと思われます》
零「あー、やっぱり? 天才だなんだって威張ってる割に、やる事が回りくどいんだよあいつ」

納得して漫画の続きを読み始める零。だが、大賢者はその思考の裏側で、マスターには決して届かない極小のシステムログを静かに走らせていた。



《――告。究極能力アルティメットスキル絶対恋愛障壁ニブチン」が常時発動中。……対象の情愛・執着・独占欲を全て「敵対行動」または「ペットの懐き」に自動変換しているため、マスターには一生理解不能と思われます》






一方、その頃。
地下基地の最深部では、敗北を喫したはずのクルルが、薄暗いモニターの前でニチャァ……と気味の悪い笑みを浮かべていた。



「ク〜ックックック……。ただで負ける俺様じゃねーよぉ。組み伏せられた瞬間に仕込んだ超小型ナノカメラ……。さぁて、魔王サマの『極秘プライベート映像』をご開帳といこうじゃねーの……!」

震える手で「再生」キーを叩くクルル。零の吐息、至近距離の瞳、隠された女性としての艶やかな瞬間――それらを独占しようと身を乗り出した、その瞬間。
ラボの巨大モニターを埋め尽くしたのは、漆黒の魔王ではなく、丸い顔、赤い頬、そして太陽のような笑顔を浮かべた「正義の味方」のドアップだった。


『そうだ! 嬉しいんだ 生きる 喜び!』


爆音で流れ出す、あまりにも純粋で無垢なテーマソング。




「…………は?」

固まるクルルの視界を、愛と勇気の使者アンパンマンとその仲間たちの画像が高速でループし、脳内を「勇気と希望」で強制洗浄していく。そして、画面の中央に大賢者の無機質なテキストが躍った。



《――告。マスターのプライバシー保護のため、非正規なデータ収集は全て「愛と勇気の使者アンパンマン」の画像・音声に変換しました。……警告。二度目はありません。…………ク〜クックック》
「っ!! てめぇぇぇ!! 大賢者ああああああああッ!! 俺様の笑い方までパクりやがったなぁああッ!!」

せっかくの「愛憎データ」を全て正義のパンに差し替えられ、あげくに嘲笑までコピーされた黄色い悪魔。
静まり返った深夜の地下基地に、彼の絶望と憤怒に満ちた叫びが、愛と勇気の使者アンパンマンのマーチと共に虚しく響き渡ったのであった。






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