第一節・第一部『異世界魔王降臨!?捕食者と被捕食者』
それは良く晴れた日。
いつものようにバイトへ行こうと、 ショートウルフの髪を雑にセットし、お気に入りの黒いパーカーを羽織って玄関を開ける零。
しかし家を出た瞬間、なんとも言えない感覚、違和感に襲われた。
零「あぁ?……なんでお隣さんの家、変わってんだ?一晩でリフォームしたってか?」
確か零の隣の家は日本家屋であったはず。
しかしそこにはどこか見覚えのある二階建ての邸宅。
高い塀に守られたその庭には、豊かな緑が溢れているが、よく目を凝らせば、立派な庭木に混じって、場違いな金属製のパラボラアンテナや不可解なハイテク装置が、日常の風景に鋭く突き刺さっている。
零「…………待って。これ、あれじゃん。あの有名な宇宙人が住んでる家じゃん…」
《告。個体名:鷹柴 零。パニックによる心拍数の上昇を確認。鎮静を推奨します》
いつの間にお隣さんに!?と混乱していると最近観ていたアニメの、無機質な聞き覚えのある声が零の脳内へと響き渡る
零「大賢者………だと!?ってことは、俺、リムルになったのか!?いや、でもここ、ジュラの大森林じゃねーし!!あぁ!なんだよ、これ!!?」
混乱し、自分の頭を抱える零。
そんな零を突き放すように、脳内の声は淡々と事実を告げる。
《解。個体名:鷹柴 零は、リムル・テンペストへと転生したわけではありません。現在の状況は「転生」ではなく、本宅を含めた「世界間転移」であると推測されます》
零「……転移だぁ? 異世界移住ってことかよ。……いや、それより、なんでお前が俺の頭の中にいるんだよ!」
《答。私は「
大賢者の声が、一拍おいて零の視線を隣の邸宅へと誘導した。
《周囲の状況を解析。この世界は、貴方の記憶にある作品「ケロロ軍曹」の世界です。貴方の自宅は、何らかの特異点として「日向家」の隣接地へと強制的に上書きされました》
零「まじかよ……。よりによって、あいつらの隣かよ……」
零は改めて隣の家――日向家を見上げた。
パラボラアンテナが微かに動き、地下から響く重低音が足の裏に伝わってくる。あの屋根の下には、地球を侵略しに来たはずがガンプラ作りに励んでいたりする色とりどりのカエルがいるのだ。
しばらくの間、零は呆然と立ち尽くしていが、どれだけ考えても目の前の「2階建ての邸宅」は消えないし、脳内の「賢者」も黙らない。
零「……ふぅ。……まあ、いいか」
零は大きく溜息をつくと、雑にセットした髪をさらに一度かき上げ、諦めたように肩の力を抜いた。
零「バイト先も消滅してるだろうし、元の世界に戻る方法なんて、お前に聞いても『今は不明です』とか言うんだろ?大賢者」
《肯定します。現時点では帰還の手段は確認できません》
零「だと思ったよ。なら、ここでパニくってても腹が減るだけだし。幸い、家ごと転移したってんなら、冷蔵庫の中身も無事だろうしな。あのアニメの連中が隣にいるなら、退屈だけはしなさそうだし……」
零は、お気に入りの黒いパーカーのポケットに手を突っ込んだ。
零「……分かったぜ。こうなりゃ、全部受け入れてやんよ」
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