第一節・第二部『ケロロ小隊「オタク化」計画、始動!!』
「おじ様〜!仕事が終わったので帰ってきました〜!モアですよ〜!ってゆーか、帰還報告?」
あれから数日後。日向家、ケロロの自室にて軍曹と零の二人は仲良くガンダム談義をしながら『ガンプラ』作りに勤しんでいた。お互いにパーツの合わせ目の消し方を褒め合ったり、カラーリングの技術を褒め合ったり。
しかしその楽しい時間も突然の光により、中断された。突如としてケロロの部屋に舞い降りた光の粒子。そこから現れたのは、アンゴル族の王女であり、恐怖の大王――アンゴル=モアだった。軍曹へ駆け寄ろうとした彼女だったが、その隣に座る「見慣れない男装の麗人」の姿に、ぴたりと足を止める。
「……あれ?おじ様、そちらの方は……?」
モアの視線が、零の手に握られたスマホ(大賢者)に注がれる。彼女のルシファースピアと同質の、高エネルギー反応を宿した端末。モアの表情が、一瞬で険しいものへと変わった。
「……おじ様の隣にいて、私と同じような通信機を持っているなんて……もしかして、新しいパートナー、なんですか……?」
その瞳に「終末の予兆」めいた暗い色が宿る。対して零は、愛用のガンプラ用ニッパーを置き、スマホを軽く弄りながら立ち上がった。
零「パートナー?……あー、まぁ、そんなもんだな。俺とこいつ(大賢者)は、切っても切れない仲だ」
零にとっては「自分とスマホ(大賢者)」の関係を言ったまでだが、モアの耳には「軍曹と零」の親密すぎる宣言に聞こえてしまった。
「おじ様の隣は、私の特等席なんです!それを……!ってゆーか、泥棒猫?」
モアの携帯電話が、瞬時に巨大な槍『ルシファースピア』へと姿を変える。
零(わあぁ……本物だ!禍々しいのに美しい……マジで神デザインじゃねぇか!うっわ、間近で見てぇぇぇ!!!)
内心でオタクとしての歓喜に震える零を他所に、軍曹の「モ、モア殿!?落ち着くであります!」という制止も虚しく、断罪のポーズが構えられた。
《警告。高エネルギー体の凝縮を確認。全方位への『断絶結界』を展開。併せて、対象武装へのハッキング・干渉を開始します》
零「ハハッ、やってみろ!大賢者!」
楽しそうに叫ぶ零。放たれた『1/100ハルマゲドン』。惑星をも砕く衝撃が零を襲うが、それは彼女の数センチ手前で「見えない壁」に衝突し、光の塵となって霧散した。
「……なっ!?避けるどころか、無効化……!?ってゆーか、驚天動地?」
「な、なんでありますか今の!我輩の部屋が、地球が消えなかったでありますか!?」
目を丸くする二人を他所に、零は一瞬の踏み込みでモアの懐へと潜り込んだ。そして、ルシファースピアを握る彼女の白い手に、自らの手を優しく、かつ力強く重ねる。
零「素晴らしい!!!…良い攻撃だったぜ、モアちゃん……流石は軍曹が信頼を置く女性だ」
「ひゃっ!?な、何を……!!?」
顔を赤らめるモア。そこからは、夏美をも籠絡せし「魔王のプレイボーイ・ターン」の独壇場だった。
零「俺は零。軍曹の素晴らしさは、俺もよく知ってる。……俺も君と同じで、あの人の魅力に惹かれた一人さ。だけど、隣に立つ資格は、ずっと彼を支えてきた君にこそ相応しい。……俺なんて、まだ君の足元にも及ばないよ。だからさ……良ければ俺に、もっと彼の良さを教えてくれないか?」
軍曹の価値を爆上げしつつ、モアのプライドと独占欲を「特別感」で優しく包み込む。魔王の包容力と、オタク特有の「推しへの愛」をミックスした言葉のナイフは、モアの心を一突きにした。
「……!私の方が、おじ様のことを……?……てゆーか、意気投合?」
嫉妬の炎は一瞬で消え失せ、モアの表情はハルマゲドン以上の熱を持ったキラキラの笑顔に変わる。
「はいっ!もちろんです!零さん、おじ様の素敵なところ、100時間くらいかけてお話ししますね!……ってゆーか、連絡先交換?」
零「あぁ、喜んで。……夜通し語り合おうぜ」
凄まじい速さでスマホを突き合わせる二人。その様子を横で見守っていた軍曹は、冷や汗を流しながらガタガタと震えていた。
「モ、モア殿が一瞬で……!?恐ろしい……恐ろしい魔王のコミュ力であります……零殿、魔王様過ぎるでありますよぉぉぉぉ!!!」
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