第一節・第二部『ケロロ小隊「オタク化」計画、始動!!』
「――完食。もとい、完走であります! 零殿、我輩…アニメの真理に開眼したであります!」
二十四時間の不眠不休アニメ修行明け。軍曹は感動の涙でぐしょぐしょになりながら、零の腹部に抱き着いている。
「ううっ、この最終回…切なすぎてボクのダークサイドが浄化されちゃうですぅ〜!」
タママも同様に、零の右足に縋り付いて号泣している。
そしてギロロに至っては、愛と軍人の本分を説く名シーンに魂を射抜かれたのか、あろうことか零の両手をがっしりと握り締めていた。
「…貴殿の教え、確かに胸に刻んだ!!!すまなかった、今まで疑っていて…っ!!」
その瞳は、零を「高潔な武人」と信じ込み、熱い敬意で燃え上がっている。
零(……よしっ、布教完了!! マジで神作画の良さが伝わってよかったぜ……!!)
零の脳内では、オタク特有のスタンディングオベーションが鳴り響いていた。表面上はクールな師匠を演じつつ、内心は歓喜の舞を踊っている。
その光景を、背中合わせで座るクルルだけが冷めた、それでいて熱を帯びた瞳で眺めていた。
そこへ、制服の上にエプロンを羽織った夏美が、怒鳴り込んできた。ここは零の自宅のリビングなのに。昨夜から漏れ聞こえる謎の爆音と嗚咽に、ついに堪忍袋の緒が切れたのだ。
「ちょっと! 隣から一晩中、変な声が聞こえるかと思ったら! また零さんに迷惑をかけて……って、え?」
夏美の動きが凍りついた。目に飛び込んできたのは、地獄のような、あるいは桃源郷のような、あまりに異様な光景。
零に抱きついて泣く軍曹、手を握りしめて見つめるギロロ、足に絡みつくタママ。そして背後には、無言で零の服の裾をぎゅっと掴んで離さないクルル。
零「あれ?夏美ちゃん、どうしてここに?」
「え?なに、これ?……零さん、ついにバカガエルたちでハーレムを!?あなたって人は……!」
夏美の肩がプルプルと震えだす。
《告。個体名、日向夏美の『嫉妬心』および『独占欲』が臨界点に到達。……さらに背後の個体名、クルル曹長からも、言語化不能な『黒い衝動』を検知。修羅場化を予測します》
零(いや、ホントなんで!!?てか、実況してないで助けろ!大賢者!)
零が内心で叫ぶが、状況は止まらない。
クルルが零の肩にひょいと乗り、夏美を挑発するように眼鏡を光らせた。
「ク〜ックック……。こいつは俺様が一番に目を付けた『獲物』だぜぇ。……外野はすっこんでな」
「なっ…!!男同士で何言ってるのよ、この陰湿ガエル! 零さんから離れなさい!」
「クルル、貴様!零は俺たちの師だ、独占は許さん!」
ギロロも参戦し、現場は一気にヒートアップ。
「今は多様性の時代でありますし。愛の形は自由でありますな!」と、アニメの影響で謎の悟りを開いた軍曹。
「僕と軍曹さんのこともあるし、大歓迎ですぅ〜! 仲間が出来たですぅ〜!」と、なぜか共闘を申し出るタママ。
零「……大賢者、マジでどうにかして……」
《報告。個体名:クルルの心拍数が上昇。……嫉妬の対象が、日向夏美から小隊全員へと拡大中。非常に興味深いデータです》
零「楽しんでるだろ、お前!!?」
カオスが極まり、零が本性を剥き出しかけた、その時。
「……姉ちゃん。朝ごはん、まだ?」
のほほんとした声と共に、制服姿の冬樹がひょっこりと顔を出した。何度も言うがここは零の自宅である。だが、あまりに自然な登場に、全員の動きが止まった。
「……あ。冬樹くん、おはよう。これから学校かい?」
「おはよう、零さん。そうだよ……なんだか、すごく仲良しさんだね?」
冬樹のあまりにマイペースな一言で、張り詰めていた「修羅場」の毒気がふっと抜けた。
零「……あー。とりあえず、腹減ったな。皆で飯にすっか」
零が苦笑いして提案すると、夏美も毒気を抜かれたように「……そうね。とりあえず、
こうして、地獄のアニメ合宿は、まさかの「家族団らん」へと場所を移すことになった
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