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「あ、壱馬さん北人さん。いらっしゃいませ」
「こんにちは」
「どーも」
ツアーの合間に訪れたFreyjaは、数人の客がいた。
「最近ケーキばっか食べてるから、太りそう」
そう微笑む北人の視線の先には笑顔で接客をするももの姿があって、恋をした北人はけっこう分かりやすいんだと新たな一面を知る。
…いや。
知らなくてよかったのかもしれない。
「お待たせしました。何になさいますか?」
さっきよりもすこし目尻を細くして、ももが俺たちを、北人を見る。
「ももさんのオススメのやつで」
「オススメでしたら、この新作のシャルロット・レザンが…レアチーズムースに旬の葡萄のジュレとカシスクリームを乗せてみました」
「へぇ、おいしそう。じゃあそれで。壱馬は?」
「俺も同じやつ。あと、」
「ブラックコーヒー、ですよね?北人さんはミルクティ。今お持ち致しますので、席におかけになってお待ちください」
ももはいたずらっぽく笑って、うきうきとコーヒーと紅茶の準備を始める。
俺だけの時はそんなに嬉しそうだっただろうか、と考え始めたらどんどん落ち込みそうだったので途中でやめた。
待っているとすぐにコーヒーとミルクティ、それから円柱形のケーキが出てくる。
甘酸っぱくて、フルーティーで、チーズのムースともよく合う爽やかな味。北人の好きそうな味だと思った。
「おいしい…!俺これすごい好きです」
「ふふ、よかったです。気合い入れて作った甲斐がありました」
俺から北人の好みを聞いて作ったケーキ。
北人のためのケーキ。
ももの作るケーキはどれも美味しい。
でも俺がいちばん好きなのは、チョコレートの微かなビターさとほろ甘さが深い味わいを奏でるオペラで、これじゃない。
「…あ、せや。俺この後用事あるんやった。先行くな」
「そうなの?分かった」
「ももさん、代金ここ置いとくから」
「ありがとうございます」
目配せすると、ももは頬を赤くして緊張した面持ちで頷いた。
今日で俺の恋が叶う確率はゼロになる。
ゼロに『なる』?
いや、違う。
ゼロに『した』んだ。
ひとり店を出る。窓の向こうのふたりは、楽しげに笑いあっていた。
散り桜が、俺のまわりをハラハラと舞う。
「バカやな、俺は」
「こんにちは」
「どーも」
ツアーの合間に訪れたFreyjaは、数人の客がいた。
「最近ケーキばっか食べてるから、太りそう」
そう微笑む北人の視線の先には笑顔で接客をするももの姿があって、恋をした北人はけっこう分かりやすいんだと新たな一面を知る。
…いや。
知らなくてよかったのかもしれない。
「お待たせしました。何になさいますか?」
さっきよりもすこし目尻を細くして、ももが俺たちを、北人を見る。
「ももさんのオススメのやつで」
「オススメでしたら、この新作のシャルロット・レザンが…レアチーズムースに旬の葡萄のジュレとカシスクリームを乗せてみました」
「へぇ、おいしそう。じゃあそれで。壱馬は?」
「俺も同じやつ。あと、」
「ブラックコーヒー、ですよね?北人さんはミルクティ。今お持ち致しますので、席におかけになってお待ちください」
ももはいたずらっぽく笑って、うきうきとコーヒーと紅茶の準備を始める。
俺だけの時はそんなに嬉しそうだっただろうか、と考え始めたらどんどん落ち込みそうだったので途中でやめた。
待っているとすぐにコーヒーとミルクティ、それから円柱形のケーキが出てくる。
甘酸っぱくて、フルーティーで、チーズのムースともよく合う爽やかな味。北人の好きそうな味だと思った。
「おいしい…!俺これすごい好きです」
「ふふ、よかったです。気合い入れて作った甲斐がありました」
俺から北人の好みを聞いて作ったケーキ。
北人のためのケーキ。
ももの作るケーキはどれも美味しい。
でも俺がいちばん好きなのは、チョコレートの微かなビターさとほろ甘さが深い味わいを奏でるオペラで、これじゃない。
「…あ、せや。俺この後用事あるんやった。先行くな」
「そうなの?分かった」
「ももさん、代金ここ置いとくから」
「ありがとうございます」
目配せすると、ももは頬を赤くして緊張した面持ちで頷いた。
今日で俺の恋が叶う確率はゼロになる。
ゼロに『なる』?
いや、違う。
ゼロに『した』んだ。
ひとり店を出る。窓の向こうのふたりは、楽しげに笑いあっていた。
散り桜が、俺のまわりをハラハラと舞う。
「バカやな、俺は」