第2章
夢小説設定
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「乾杯」
「乾杯」
コツン、グラス同士がぶつかって私の瞳と同じ色の液体が揺れる。
ここはTHE RAMPAGEクラブ内にあるバー。バーテンダーを務めるのは与那嶺瑠唯、そして私の隣に座っているのはカジノ部マーケティング課マネージャー、吉野北人だ。
「北人は慎の直属の上司なのね」
「はい。と言っても俺なんかよりまこっちゃんの方がよっぽどしっかりしてますけどね」
「いや、そんなことないです」
私の斜め後ろに控えていた慎が慌てて首を横に振る。というか何でそんな所に突っ立っているんだ。私は慎の腕を引っ張って隣に座らせ、瑠唯に「カルーアミルクを」と注文した。
「慎はよく壱馬と一緒にいるじゃない?だから最初のうちはそこが上司と部下なのかと思ってたわ」
「壱馬さんとは個人的に仲良くしていただいていて。ここに入社する前から一緒にいましたから」
「へぇそうなの、それは初耳だわ…そういえば北人と樹も直属じゃないけど仲良しよね」
「樹は、まぁ…イジりたくなっちゃうんすよね。猫みたいで可愛くて」
「ふふ、なるほど。確かに樹は男女問わずモテそうね」
瑠唯が乳白色のカクテルが入った丸っこいグラスを慎の前に差し出した。瑠唯の作るお酒はどれも美味しくて、私はたまに昼間からここに来てしまうこともある。
「まぁ樹はモテますね。みんなあいつの本性を知らないんですよ。俺にはツンツンツンツンしてるくせに」
「あら、そうなの?意外だわ」
私はくすりと笑ってジンのグラスを傾けた。そして、何でも無いことのように切り出す。
「それで、私に話があるんじゃなくて?北人」
笑顔を1mmも崩さなかった北人は、さすが接客を主とするマーケティング課のトップに立つ男といったところか。
北人は変わらず甘いマスクに柔らかい笑みを浮かべたままスクリュードライバーのグラスに口をつけた。
「そんな即物的に生きなくてもいいじゃないですか」
「駆け引きはギャンブルだけで充分だわ」
「恋の駆け引きは?」
「もう、早く本題に入って」
「あはは、すみません」
北人はけらけら笑って、少し私の方に身を乗り出した。逆隣にすわる慎は黙って事の行方を見守っている。
「いや別に大したことじゃないんです。来月にうちのハイローラーやVIPの方々を招いてパーティーを開こうと思っていて。それで、あおいさんもぜひご招待したく」
「あらパーティー?素敵じゃない」
「招待状はまた後ほど送りますけど、事前に確認だけでもと思って。それに…」
北人はこてんと首を傾け、きっとこれまで何人もの女をとろけさせてきたのだろう甘い笑みを深くさせた。
「あなたとこうやってお話ししてみたかったから」
カラン、溶けた氷が私の空っぽのグラスを叩く。
「あら、公私混同はよくないんじゃない?瑠唯と慎があなた達のリーダーさんに言っちゃうわよ」
私がカウンターの向こうの瑠唯を見やると、瑠唯は紫色の髪をふわりと揺らしてミステリアスに笑った。
「いや、北ちゃんいっつもここでこうやって女の子ひっかけてるから。俺はもう何も聞こえてないよ」
「瑠唯さんも可愛い子がきたらいつもよりリキュール多めに入れるじゃないですか。おあいこです」
「それを言われちゃうと弱いな」
「あと健太さんが来た時はめちゃくちゃ強いお酒を出してさっさと追い返しますよね」
慎にそう言われ、瑠唯はグラスを磨きながら苦笑いを浮かべる。
「だって健太は仕事抜け出して飲みに来てるから。まぁもう諦めたけどね」
「幼馴染なのよね、健太と瑠唯は」
「そう。田舎にいた頃からずーっと一緒」
「運命的ね。素敵だわ」
確かに健太とはこのバーで頻繁に一緒になる。お酒が好きだと本人が言っていたが仕事を抜け出してまで飲みに来るほどとは思わなかった。
あぁ、話が逸れてしまった。パーティーの話だ。
もちろん断る理由などどこにもない私ははっきりと首肯する。
「ぜひ、参加してみたいわね。誰が来るの?」
「その辺はまこっちゃんが把握してるよね」
「あ、はい」
慎の口からつらつらと述べられるのはここや他のカジノでも出会ったことのあるいずれも富豪ばかり。
その中に、彼の名前があった。
「あとは…来栖グループの社長さんもいらっしゃいますね」
カラ、グラスの中の氷がまた音を鳴らす。
「…そう」
彼が、来るのか。とうとう見える時が訪れるのだ。
私は綿密に練った復讐の計画などお首にも出さずににこりと北人に笑いかけた。
「パーティーが楽しみだわ」
「乾杯」
コツン、グラス同士がぶつかって私の瞳と同じ色の液体が揺れる。
ここはTHE RAMPAGEクラブ内にあるバー。バーテンダーを務めるのは与那嶺瑠唯、そして私の隣に座っているのはカジノ部マーケティング課マネージャー、吉野北人だ。
「北人は慎の直属の上司なのね」
「はい。と言っても俺なんかよりまこっちゃんの方がよっぽどしっかりしてますけどね」
「いや、そんなことないです」
私の斜め後ろに控えていた慎が慌てて首を横に振る。というか何でそんな所に突っ立っているんだ。私は慎の腕を引っ張って隣に座らせ、瑠唯に「カルーアミルクを」と注文した。
「慎はよく壱馬と一緒にいるじゃない?だから最初のうちはそこが上司と部下なのかと思ってたわ」
「壱馬さんとは個人的に仲良くしていただいていて。ここに入社する前から一緒にいましたから」
「へぇそうなの、それは初耳だわ…そういえば北人と樹も直属じゃないけど仲良しよね」
「樹は、まぁ…イジりたくなっちゃうんすよね。猫みたいで可愛くて」
「ふふ、なるほど。確かに樹は男女問わずモテそうね」
瑠唯が乳白色のカクテルが入った丸っこいグラスを慎の前に差し出した。瑠唯の作るお酒はどれも美味しくて、私はたまに昼間からここに来てしまうこともある。
「まぁ樹はモテますね。みんなあいつの本性を知らないんですよ。俺にはツンツンツンツンしてるくせに」
「あら、そうなの?意外だわ」
私はくすりと笑ってジンのグラスを傾けた。そして、何でも無いことのように切り出す。
「それで、私に話があるんじゃなくて?北人」
笑顔を1mmも崩さなかった北人は、さすが接客を主とするマーケティング課のトップに立つ男といったところか。
北人は変わらず甘いマスクに柔らかい笑みを浮かべたままスクリュードライバーのグラスに口をつけた。
「そんな即物的に生きなくてもいいじゃないですか」
「駆け引きはギャンブルだけで充分だわ」
「恋の駆け引きは?」
「もう、早く本題に入って」
「あはは、すみません」
北人はけらけら笑って、少し私の方に身を乗り出した。逆隣にすわる慎は黙って事の行方を見守っている。
「いや別に大したことじゃないんです。来月にうちのハイローラーやVIPの方々を招いてパーティーを開こうと思っていて。それで、あおいさんもぜひご招待したく」
「あらパーティー?素敵じゃない」
「招待状はまた後ほど送りますけど、事前に確認だけでもと思って。それに…」
北人はこてんと首を傾け、きっとこれまで何人もの女をとろけさせてきたのだろう甘い笑みを深くさせた。
「あなたとこうやってお話ししてみたかったから」
カラン、溶けた氷が私の空っぽのグラスを叩く。
「あら、公私混同はよくないんじゃない?瑠唯と慎があなた達のリーダーさんに言っちゃうわよ」
私がカウンターの向こうの瑠唯を見やると、瑠唯は紫色の髪をふわりと揺らしてミステリアスに笑った。
「いや、北ちゃんいっつもここでこうやって女の子ひっかけてるから。俺はもう何も聞こえてないよ」
「瑠唯さんも可愛い子がきたらいつもよりリキュール多めに入れるじゃないですか。おあいこです」
「それを言われちゃうと弱いな」
「あと健太さんが来た時はめちゃくちゃ強いお酒を出してさっさと追い返しますよね」
慎にそう言われ、瑠唯はグラスを磨きながら苦笑いを浮かべる。
「だって健太は仕事抜け出して飲みに来てるから。まぁもう諦めたけどね」
「幼馴染なのよね、健太と瑠唯は」
「そう。田舎にいた頃からずーっと一緒」
「運命的ね。素敵だわ」
確かに健太とはこのバーで頻繁に一緒になる。お酒が好きだと本人が言っていたが仕事を抜け出してまで飲みに来るほどとは思わなかった。
あぁ、話が逸れてしまった。パーティーの話だ。
もちろん断る理由などどこにもない私ははっきりと首肯する。
「ぜひ、参加してみたいわね。誰が来るの?」
「その辺はまこっちゃんが把握してるよね」
「あ、はい」
慎の口からつらつらと述べられるのはここや他のカジノでも出会ったことのあるいずれも富豪ばかり。
その中に、彼の名前があった。
「あとは…来栖グループの社長さんもいらっしゃいますね」
カラ、グラスの中の氷がまた音を鳴らす。
「…そう」
彼が、来るのか。とうとう見える時が訪れるのだ。
私は綿密に練った復讐の計画などお首にも出さずににこりと北人に笑いかけた。
「パーティーが楽しみだわ」