第2章
夢小説設定
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「まこっちゃん」
背後から呼び止められ、足を止める。
振り返る前からそれが誰か分かっていた。
「…翔平さん」
いつになく真剣な表情で、翔平さんが数歩後ろから俺を見つめていた。
「別に俺はまこっちゃんのプライベートな部分にまで踏み込む気はないけど」
「はい」
「ちゃんと避妊はしなきゃダメだよ」
「…は?」
予想していたこととは斜め上の言葉に、俺の口から思わず素っ頓狂な声が漏れる。ぽかんとする俺に構わず、翔平さんは俺の背中をばしばし叩きながら悪戯っぽく笑った。
「さっきいい感じになってたじゃん、フラれてたけど」
「…やっぱ見てました?」
「みんな見てた」
「サイアク」
思わず出そうになった舌打ちを飲み込んで、俺は代わりに深い深いため息をつく。
あの時。俺の唇に触れたのはあの人の泉をたたえてふるふると揺れる紅ではなく、すらりと長い指だった。
「絶対そういう雰囲気だったと思ったんすけどね…」
「相手が悪かったんだよ、あの梟とキスなんてまこっちゃんには100年早い」
「じゃあ翔平さんには99年早いってことですね」
俺たちは軽口を叩きあいながらカジノに直結の社員寮へ向かう。
「梟のことが好きなの?」
「いや…正体の知れない女を好きになるほど女好きじゃないですから。年齢もわかんないのに。ただまぁ、あおいさん美人だし火遊び程度ならいいかなって…」
「それを女好きって言うんだよこのイケメン野郎!!ばか!!ヘンタイ!!」
「ええ…」
でもあの時俺は本気で、この人とキスをしてもいいと思った。なんならその先だって。
ただ、それが『好き』に繋がるかどうかは分からない。
それに、とさらに思考を進める。
あの人は俺を拒んだのだ。あのたった1本の細い指で。
それなのに俺が望んでどうする。あまりにも高嶺の花じゃないか。
俺の部屋の前に着く。翔平さんの部屋は俺の部屋の真上なので、今日はここでお別れだ。
「…まぁ、何にせよ」
ドアにカードキーを押し当て、暗証番号を打ち込んだ。部屋に一歩足を踏み入れたところで翔平さんを振り返る。
「あくまで俺は従業員で、あの人はゲストです。それ以上にもそれ以下にもなっちゃいけないことはよく分かってますから」
じゃ、おやすみなさい。そう短く挨拶して背を向ける。
音もなく閉じた扉の向こうで翔平さんが呟いた言葉は、俺のもとには届かなかった。
「その言い方だと『それ以上』になりたいのを抑え込んでるみたいだよまこっちゃん…」
背後から呼び止められ、足を止める。
振り返る前からそれが誰か分かっていた。
「…翔平さん」
いつになく真剣な表情で、翔平さんが数歩後ろから俺を見つめていた。
「別に俺はまこっちゃんのプライベートな部分にまで踏み込む気はないけど」
「はい」
「ちゃんと避妊はしなきゃダメだよ」
「…は?」
予想していたこととは斜め上の言葉に、俺の口から思わず素っ頓狂な声が漏れる。ぽかんとする俺に構わず、翔平さんは俺の背中をばしばし叩きながら悪戯っぽく笑った。
「さっきいい感じになってたじゃん、フラれてたけど」
「…やっぱ見てました?」
「みんな見てた」
「サイアク」
思わず出そうになった舌打ちを飲み込んで、俺は代わりに深い深いため息をつく。
あの時。俺の唇に触れたのはあの人の泉をたたえてふるふると揺れる紅ではなく、すらりと長い指だった。
「絶対そういう雰囲気だったと思ったんすけどね…」
「相手が悪かったんだよ、あの梟とキスなんてまこっちゃんには100年早い」
「じゃあ翔平さんには99年早いってことですね」
俺たちは軽口を叩きあいながらカジノに直結の社員寮へ向かう。
「梟のことが好きなの?」
「いや…正体の知れない女を好きになるほど女好きじゃないですから。年齢もわかんないのに。ただまぁ、あおいさん美人だし火遊び程度ならいいかなって…」
「それを女好きって言うんだよこのイケメン野郎!!ばか!!ヘンタイ!!」
「ええ…」
でもあの時俺は本気で、この人とキスをしてもいいと思った。なんならその先だって。
ただ、それが『好き』に繋がるかどうかは分からない。
それに、とさらに思考を進める。
あの人は俺を拒んだのだ。あのたった1本の細い指で。
それなのに俺が望んでどうする。あまりにも高嶺の花じゃないか。
俺の部屋の前に着く。翔平さんの部屋は俺の部屋の真上なので、今日はここでお別れだ。
「…まぁ、何にせよ」
ドアにカードキーを押し当て、暗証番号を打ち込んだ。部屋に一歩足を踏み入れたところで翔平さんを振り返る。
「あくまで俺は従業員で、あの人はゲストです。それ以上にもそれ以下にもなっちゃいけないことはよく分かってますから」
じゃ、おやすみなさい。そう短く挨拶して背を向ける。
音もなく閉じた扉の向こうで翔平さんが呟いた言葉は、俺のもとには届かなかった。
「その言い方だと『それ以上』になりたいのを抑え込んでるみたいだよまこっちゃん…」