第4章
夢小説設定
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「…で、昂秀。ヤバい情報って何?」
昂秀の招集により急遽開かれたメンバー会議。
全員何も聞かされずに集まったので、みんなが不思議そうに昂秀の方を見ている。
するとさっそくそれぞれの目の前にとあるデータが表示された。もちろん昂秀の操作によるものだ。
「これ、なんですけど」
「『極秘国際指名手配書』…?何だこれ、極秘ってどゆこと」
海青さんが首を傾げる。
俺の前に表示されたのは、どうやら国際警察が発行している手配書のようだった。
懸賞金は1億。相当高いが、何よりも驚くべきは指名手配されているその人物だ。細かい罪状の内容の隣に掲載された写真。どこからか盗撮したかのようなその写真には、しかしはっきりとその人物の顔が写っていた。
「指名手配って…まだ子供じゃん」
龍が呟く。しかし俺の耳にはその言葉すら入ってこなかった。
栗色の髪の美しい少女。はっきりとした目鼻立ちは、あと20年もすれば相当の美貌に成長するだろうと思われる。
そして何よりも目を引く、
金色の大きな瞳。
「この目…」
驚きの表情を浮かべて拓磨が呟いた。
見間違えるはずもない。この猛禽類の瞳。よくよく見れば顔立ちに面影がある。
俺は慌ててその手配書に書かれた名前を確認した。
「麻藤院あおい…」
『あおい、と。そう呼んで』
初めて会った夜にそう言った彼女の笑顔。
やっと分かった。ようやく1歩、あなたに近付いた。
「あおいさんだ…間違いない」
俺の言葉に、全員が頷く。
でも、なんで。
「なんで国際指名手配…?」
「罪状は『犯人隠秘』ってなってるけど、隠した犯人が誰なのかも目星はついてる」
「誰なのそれ、昂秀」
昂秀が珍しく真面目な顔で告げる。
「自分の母親だよ。麻藤院莇」
「母親…?」
また新たな手配書が浮かび上がる。
そこにはあおいさんと同じ金色の瞳をした美しい女性が写っていた。
熟年の女にしか醸し出すことはできないむせかえるような色香は淫靡とすら思える。女の魅力だけで構成されたようなその顔立ちは、あおいさんとはあまり似ていない。父親似なのだろうか、共通しているのは金色の瞳だけだ。
あおいさんとはまた別のタイプのエキゾチックでエロティックな女性だった。
「彼女の罪は放火、殺人、窃盗」
「そんなんウチの客はもっとえげつないことやっとるやろ。なんでこの人が国際的に指名手配されとるん?」
陣さんの問いかけに、昂秀は淀みなくすらすらと答えていく。
「規模が違うんです」
「規模…?」
「20年前。この人は街ひとつ焼く火災を引き起こし、そこに住む多くの人を殺した」
20年前。
街ひとつが灰燼に帰した大火災。
犯人の女。
全てのピースがあるべき位置にハマった瞬間、そのパズルはあおいさんの形を成した。
突然立ち上がった俺を、みんなが不思議そうに見上げる。
そうか。そういうことだったのか。
「慎?どうしたん?」
「前に昂秀と話したことがあったんです。来栖がこの焼けたスラム街の土地を買い取って、今は自社製品を作る工場にしてるって。しかもこの麻藤院莇…あおいさんの母親が犯人だって国際警察に告げ口をしたのが来栖らしくて」
「それは確かな情報?」
山彰さんに尋ねられ、俺と昂秀は同時に頷いた。
「「間違いないです」」
これであおいさんと来栖が繋がった。
どうしてあの人が勝負にわざと負けたのかも。
「じゃあもしかしたら、あおいさんは母親を警察に売った来栖に恨みを抱いてるんじゃ…」
翔吾さんの言葉に、全員がはっと顔を見合わせた。
今は17時。
止めなくちゃ、理由もなくそう思った。
「やっぱりわざと負けたんです。来栖への復讐を果たすために。そうとしか思えない」
出口に向かう俺の背中に、力矢さんの鋭い言葉が突き刺さる。
「待って、まこっちゃん」
ドアノブにかけた俺の手がぴたりと止まった。振り返らない俺に、力矢さんはさらに言い募る。
「あの人は客で、俺たちは従業員だよ。自分の立場を考えろ。俺たちが背負うものを思い出せ」
俺たちが背負うもの。
それは巨大マフィアファミリー、LDHの看板だ。
THE RAMPAGEの16人はマフィアの一員。そんな立場の俺たちが来栖の屋敷に乗り込んでいくということは、大きな意味を持つ。
それは明確な宣戦布告だ。
LDHファミリーは来栖グループに敵対するという宣言。
「客の個人的な問題に首を突っ込むもんじゃない。あえて冷たい言い方をすると、あおいさんが来栖を殺そうが、それで彼女が怒り狂った来栖グループに報復されようが、俺たちには関係ないんだ。分かるよね?」
「…でも俺は」
俺は。
ドアノブを持つ手に力を込める。振り返る。
やっと気づいたんだ。
もう止まれない。
「俺は、ひとりの男としてあの人を止めなくちゃならないんです。立場とか、後先とか。そんなのクソくらえだ」
昂秀の招集により急遽開かれたメンバー会議。
全員何も聞かされずに集まったので、みんなが不思議そうに昂秀の方を見ている。
するとさっそくそれぞれの目の前にとあるデータが表示された。もちろん昂秀の操作によるものだ。
「これ、なんですけど」
「『極秘国際指名手配書』…?何だこれ、極秘ってどゆこと」
海青さんが首を傾げる。
俺の前に表示されたのは、どうやら国際警察が発行している手配書のようだった。
懸賞金は1億。相当高いが、何よりも驚くべきは指名手配されているその人物だ。細かい罪状の内容の隣に掲載された写真。どこからか盗撮したかのようなその写真には、しかしはっきりとその人物の顔が写っていた。
「指名手配って…まだ子供じゃん」
龍が呟く。しかし俺の耳にはその言葉すら入ってこなかった。
栗色の髪の美しい少女。はっきりとした目鼻立ちは、あと20年もすれば相当の美貌に成長するだろうと思われる。
そして何よりも目を引く、
金色の大きな瞳。
「この目…」
驚きの表情を浮かべて拓磨が呟いた。
見間違えるはずもない。この猛禽類の瞳。よくよく見れば顔立ちに面影がある。
俺は慌ててその手配書に書かれた名前を確認した。
「麻藤院あおい…」
『あおい、と。そう呼んで』
初めて会った夜にそう言った彼女の笑顔。
やっと分かった。ようやく1歩、あなたに近付いた。
「あおいさんだ…間違いない」
俺の言葉に、全員が頷く。
でも、なんで。
「なんで国際指名手配…?」
「罪状は『犯人隠秘』ってなってるけど、隠した犯人が誰なのかも目星はついてる」
「誰なのそれ、昂秀」
昂秀が珍しく真面目な顔で告げる。
「自分の母親だよ。麻藤院莇」
「母親…?」
また新たな手配書が浮かび上がる。
そこにはあおいさんと同じ金色の瞳をした美しい女性が写っていた。
熟年の女にしか醸し出すことはできないむせかえるような色香は淫靡とすら思える。女の魅力だけで構成されたようなその顔立ちは、あおいさんとはあまり似ていない。父親似なのだろうか、共通しているのは金色の瞳だけだ。
あおいさんとはまた別のタイプのエキゾチックでエロティックな女性だった。
「彼女の罪は放火、殺人、窃盗」
「そんなんウチの客はもっとえげつないことやっとるやろ。なんでこの人が国際的に指名手配されとるん?」
陣さんの問いかけに、昂秀は淀みなくすらすらと答えていく。
「規模が違うんです」
「規模…?」
「20年前。この人は街ひとつ焼く火災を引き起こし、そこに住む多くの人を殺した」
20年前。
街ひとつが灰燼に帰した大火災。
犯人の女。
全てのピースがあるべき位置にハマった瞬間、そのパズルはあおいさんの形を成した。
突然立ち上がった俺を、みんなが不思議そうに見上げる。
そうか。そういうことだったのか。
「慎?どうしたん?」
「前に昂秀と話したことがあったんです。来栖がこの焼けたスラム街の土地を買い取って、今は自社製品を作る工場にしてるって。しかもこの麻藤院莇…あおいさんの母親が犯人だって国際警察に告げ口をしたのが来栖らしくて」
「それは確かな情報?」
山彰さんに尋ねられ、俺と昂秀は同時に頷いた。
「「間違いないです」」
これであおいさんと来栖が繋がった。
どうしてあの人が勝負にわざと負けたのかも。
「じゃあもしかしたら、あおいさんは母親を警察に売った来栖に恨みを抱いてるんじゃ…」
翔吾さんの言葉に、全員がはっと顔を見合わせた。
今は17時。
止めなくちゃ、理由もなくそう思った。
「やっぱりわざと負けたんです。来栖への復讐を果たすために。そうとしか思えない」
出口に向かう俺の背中に、力矢さんの鋭い言葉が突き刺さる。
「待って、まこっちゃん」
ドアノブにかけた俺の手がぴたりと止まった。振り返らない俺に、力矢さんはさらに言い募る。
「あの人は客で、俺たちは従業員だよ。自分の立場を考えろ。俺たちが背負うものを思い出せ」
俺たちが背負うもの。
それは巨大マフィアファミリー、LDHの看板だ。
THE RAMPAGEの16人はマフィアの一員。そんな立場の俺たちが来栖の屋敷に乗り込んでいくということは、大きな意味を持つ。
それは明確な宣戦布告だ。
LDHファミリーは来栖グループに敵対するという宣言。
「客の個人的な問題に首を突っ込むもんじゃない。あえて冷たい言い方をすると、あおいさんが来栖を殺そうが、それで彼女が怒り狂った来栖グループに報復されようが、俺たちには関係ないんだ。分かるよね?」
「…でも俺は」
俺は。
ドアノブを持つ手に力を込める。振り返る。
やっと気づいたんだ。
もう止まれない。
「俺は、ひとりの男としてあの人を止めなくちゃならないんです。立場とか、後先とか。そんなのクソくらえだ」