第4章
夢小説設定
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あのキスの感触が忘れられない。
「なーんか、あおいさんおらへんとおもしろくないなぁ」
俺の隣で壱馬さんがカジノホールの様子を眺めながらぼそりと呟いた。
「カジノ部のトップがそんなこと言っちゃダメなんじゃないですか。ホールに活気を持たせるのが仕事なんですから」
「そうなんやけどな」
でも、と壱馬さんが俺の肩を小突いた。
「あおいさんが来栖んとこ行っちゃって1番ショック受けとるのはお前やろ慎」
「…1番ショックだったのは」
「え?」
「あの人がわざと負けたことです」
壱馬さんの顔からすっと感情が消える。他の誰かに聞こえないように声を低くして、ぼそりと呟く。
「やっぱそう思うか?」
「はい」
俺が頷くと、壱馬さんはすぐに俺の腕を引っ張ってバックヤードへと連れていった。
「来栖のイカサマ?」
「いや、来栖もあおいさんもイカサマはしていませんでした。間違いないです、後で録画を確認しましたから。だからあれは、単純にあおいさんがわざと負けたんです」
「わざと負けたって…でも出てくるカードは自分じゃ選べへんやろ」
「あの人は相手の心理を読む技術と直感でゲームをしている。いつもそうです。その勘が外れたことは1度だってなかった。だからたぶん、あの時は自分の直感が示すものと反対の行動を取ったんでしょう。そうすればいいカードは手元に来ないんだから」
沈んだ調子で淡々と述べた俺の意見を聞いて、壱馬さんが低く唸る。
「なるほど…あの人にしかできひんことやな」
「はい。ただ、どうしてわざと負けたのかは分からない。分からないけど、無敗伝説を自分の手でぶち壊してまで彼の元に行ったことが、残念でならないんです」
どうしてそんな手を使う必要があったのか。どうしてそうまでして彼に執着するのか。
あの人の考えていることなんて何一つ分からないけど、それでも、俺はひとつだけはっきりと確信していることがある。
「俺は、嫉妬してるんです。あの男に」
壱馬さんがはっと顔を上げる。俺の目を見つめる。
たった1度、あのキスで。あの人は俺の心を閉ざしていた蓋を攫ってしまったのだ。
たくさんの言い訳に埋もれていたこの恋心を、いとも簡単にすくいあげられてしまったのだ。
そう。
これは、恋だった。
「あの人に選ばれなかった自分が悔しいんです」
「慎…」
壱馬さんが何か言おうと口を開く。そこから言葉が漏れでるその一瞬前、ふいに俺たちの耳に無線が入った。
『こちら昂秀。ちょっとあの、ヤバい情報見つけちゃったんですけど』
「なーんか、あおいさんおらへんとおもしろくないなぁ」
俺の隣で壱馬さんがカジノホールの様子を眺めながらぼそりと呟いた。
「カジノ部のトップがそんなこと言っちゃダメなんじゃないですか。ホールに活気を持たせるのが仕事なんですから」
「そうなんやけどな」
でも、と壱馬さんが俺の肩を小突いた。
「あおいさんが来栖んとこ行っちゃって1番ショック受けとるのはお前やろ慎」
「…1番ショックだったのは」
「え?」
「あの人がわざと負けたことです」
壱馬さんの顔からすっと感情が消える。他の誰かに聞こえないように声を低くして、ぼそりと呟く。
「やっぱそう思うか?」
「はい」
俺が頷くと、壱馬さんはすぐに俺の腕を引っ張ってバックヤードへと連れていった。
「来栖のイカサマ?」
「いや、来栖もあおいさんもイカサマはしていませんでした。間違いないです、後で録画を確認しましたから。だからあれは、単純にあおいさんがわざと負けたんです」
「わざと負けたって…でも出てくるカードは自分じゃ選べへんやろ」
「あの人は相手の心理を読む技術と直感でゲームをしている。いつもそうです。その勘が外れたことは1度だってなかった。だからたぶん、あの時は自分の直感が示すものと反対の行動を取ったんでしょう。そうすればいいカードは手元に来ないんだから」
沈んだ調子で淡々と述べた俺の意見を聞いて、壱馬さんが低く唸る。
「なるほど…あの人にしかできひんことやな」
「はい。ただ、どうしてわざと負けたのかは分からない。分からないけど、無敗伝説を自分の手でぶち壊してまで彼の元に行ったことが、残念でならないんです」
どうしてそんな手を使う必要があったのか。どうしてそうまでして彼に執着するのか。
あの人の考えていることなんて何一つ分からないけど、それでも、俺はひとつだけはっきりと確信していることがある。
「俺は、嫉妬してるんです。あの男に」
壱馬さんがはっと顔を上げる。俺の目を見つめる。
たった1度、あのキスで。あの人は俺の心を閉ざしていた蓋を攫ってしまったのだ。
たくさんの言い訳に埋もれていたこの恋心を、いとも簡単にすくいあげられてしまったのだ。
そう。
これは、恋だった。
「あの人に選ばれなかった自分が悔しいんです」
「慎…」
壱馬さんが何か言おうと口を開く。そこから言葉が漏れでるその一瞬前、ふいに俺たちの耳に無線が入った。
『こちら昂秀。ちょっとあの、ヤバい情報見つけちゃったんですけど』