第4章
夢小説設定
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「…君は美しいね」
「ありがとうございます」
来栖の屋敷。その寝室で、私はベッドのふちに腰掛けている。
「初めて出会った時から惹かれていたんだ。こんなにも美しくて聡明な女性を自分のものにできたらと、そう思った」
「私だってそうです。貴方の魅力に捕らわれて…」
「ふふ、嬉しいな」
来栖が私の隣に座る。手のひらがするりと背中に回る。
平静を装っていたが、心臓は破裂しそうなほどに脈打っていた。
20年待った。この日のために入念なる計画を練ってきた。
この男に復讐を果たすために。
ゆっくりとベッドに倒れ込む。私をシーツの海に組み敷いて、来栖が笑っていた。
「ああ、夢みたいだ。こうして君を俺の腕に抱くことができるなんて」
「ねぇ、はやく…はやく、来て」
両腕をするりと来栖の広い背中に回す。袖に隠していた極細の仕込みナイフを手にしっかりと握り、服の中をまさぐる手に甘い吐息を吐きながら、私は覚悟を決めた。
さぁ、今。ここ。
殺れ。
グサリ
「っ!?うあ…!」
くそ、少し外れた。手応えはあったが、刺したのは右の肩甲骨のあたりだったらしい。血が溢れ、私の頬にかかる。
「なっ…何を……!?うあ、くそ、」
苦悶の表情を顔に浮かべて、来栖がベッドに倒れ込む。助けを呼ぼうと大きく開けた口に持っていたハンカチを突っ込んで、私はその上に馬乗りになった。
「本当に、夢みたいだわ。20年間待ち焦がれたんだもの」
「ん、んんんっ!んぅ……!?」
「ずっと考えていた。あなたへの復讐を」
ナイフを持つ手にぐっと力を込める。長い髪がはらりと落ちて、来栖の頬にかかった。
「私の名前を、覚えてる?」
私の名前。
20年前から誰にも教えていなかった、私の本名。
来栖がそのグレーの瞳いっぱいに恐怖を映して私を見上げる。
私の、名前は。
「麻藤院あおい」
来栖が大きく目を見開いた。
忘れたとは言わせない。この男に人生を狂わせられた私の存在を。
私と、私の母の存在を。
「思い出した?20年前のあの事件…私の母を嵌めて、全ての罪を擦り付けて逃げたのよね、あなたは。あれから母も、私も、世間から後ろ指を刺されて生きることになった。国際警察にも追われた。全部全部、あなたのせいでね」
ナイフを構え直す。左胸にぴたりと照準を合わせる。
「罪を償うだけじゃ足りない。地獄の釜の底で苦しみ続けなさい。自分が犯した全ての罪を悔やむのね」
心臓が煩い。くぐもった叫びが耳障りだ。
これで終わりだ。全部全部、終わらせてやる。
死ね──────────────────
『わざと負けたんじゃないですか』
不意に響いた慎の声。
煩い。黙れ。お前は関係ない。
ナイフを振りかざす。
しかしその時、突然部屋の外が騒がしくなったかと思ったら、木製の扉が吹っ飛ばされた。
しまった勘づかれたか、と私は再びナイフを来栖の心臓に向かって振り下ろそうとするが、部屋に飛び込んできた男の声で手がぴたりと止まる。
「あおいさん!!!!!!!!!!!!!!!」
残り1mm。ナイフの切っ先が、ギリギリの所で止まった。
身を起こす。振り返る。
そこに立っていたのは…
「慎…!?」
「ありがとうございます」
来栖の屋敷。その寝室で、私はベッドのふちに腰掛けている。
「初めて出会った時から惹かれていたんだ。こんなにも美しくて聡明な女性を自分のものにできたらと、そう思った」
「私だってそうです。貴方の魅力に捕らわれて…」
「ふふ、嬉しいな」
来栖が私の隣に座る。手のひらがするりと背中に回る。
平静を装っていたが、心臓は破裂しそうなほどに脈打っていた。
20年待った。この日のために入念なる計画を練ってきた。
この男に復讐を果たすために。
ゆっくりとベッドに倒れ込む。私をシーツの海に組み敷いて、来栖が笑っていた。
「ああ、夢みたいだ。こうして君を俺の腕に抱くことができるなんて」
「ねぇ、はやく…はやく、来て」
両腕をするりと来栖の広い背中に回す。袖に隠していた極細の仕込みナイフを手にしっかりと握り、服の中をまさぐる手に甘い吐息を吐きながら、私は覚悟を決めた。
さぁ、今。ここ。
殺れ。
グサリ
「っ!?うあ…!」
くそ、少し外れた。手応えはあったが、刺したのは右の肩甲骨のあたりだったらしい。血が溢れ、私の頬にかかる。
「なっ…何を……!?うあ、くそ、」
苦悶の表情を顔に浮かべて、来栖がベッドに倒れ込む。助けを呼ぼうと大きく開けた口に持っていたハンカチを突っ込んで、私はその上に馬乗りになった。
「本当に、夢みたいだわ。20年間待ち焦がれたんだもの」
「ん、んんんっ!んぅ……!?」
「ずっと考えていた。あなたへの復讐を」
ナイフを持つ手にぐっと力を込める。長い髪がはらりと落ちて、来栖の頬にかかった。
「私の名前を、覚えてる?」
私の名前。
20年前から誰にも教えていなかった、私の本名。
来栖がそのグレーの瞳いっぱいに恐怖を映して私を見上げる。
私の、名前は。
「麻藤院あおい」
来栖が大きく目を見開いた。
忘れたとは言わせない。この男に人生を狂わせられた私の存在を。
私と、私の母の存在を。
「思い出した?20年前のあの事件…私の母を嵌めて、全ての罪を擦り付けて逃げたのよね、あなたは。あれから母も、私も、世間から後ろ指を刺されて生きることになった。国際警察にも追われた。全部全部、あなたのせいでね」
ナイフを構え直す。左胸にぴたりと照準を合わせる。
「罪を償うだけじゃ足りない。地獄の釜の底で苦しみ続けなさい。自分が犯した全ての罪を悔やむのね」
心臓が煩い。くぐもった叫びが耳障りだ。
これで終わりだ。全部全部、終わらせてやる。
死ね──────────────────
『わざと負けたんじゃないですか』
不意に響いた慎の声。
煩い。黙れ。お前は関係ない。
ナイフを振りかざす。
しかしその時、突然部屋の外が騒がしくなったかと思ったら、木製の扉が吹っ飛ばされた。
しまった勘づかれたか、と私は再びナイフを来栖の心臓に向かって振り下ろそうとするが、部屋に飛び込んできた男の声で手がぴたりと止まる。
「あおいさん!!!!!!!!!!!!!!!」
残り1mm。ナイフの切っ先が、ギリギリの所で止まった。
身を起こす。振り返る。
そこに立っていたのは…
「慎…!?」