第3章
夢小説設定
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「…結局、この前まこっちゃんとあおいさんが襲撃された奴らの正体は掴めてないらしい。AKIRAさんからそう連絡があった」
16人での定例会議で、力矢さんはパイプを蒸かしながらそう言った。
「そうですか…何だったんだろうあれは」
「まぁたぶんいつもの警察の手先やろ。最近俺らのシマをうろちょろしとるらしいし」
陣さんが眉をしかめながら吐き捨てるようにそう呟く。その指には陣さんお気に入りの葉巻、モンテクリストNo.4が挟まれている。
うちのカジノはLDHファミリーの重要な資金源であり、さらに裏社会の人間たちも多く集うため昔から国際警察の標的とされている。
しかし俺たちに手を出すということはLDHファミリーに明確に喧嘩を売るということだし、そもそも俺たちは攻め込まれてすぐに白旗を振るほどヤワじゃない。そんな理由から警察とはじりじりと睨み合いの状態が続いていた。
最近は特に警察の動きが活発になっており、ナワバリ内での小さな抗争もゲリラ的に勃発している。
まぁ、向こうの動きが変わったのにもそれなりの理由があるわけだけど。
「…たぶん、来栖とあおいさんの対戦の情報が広まってるからだね」
陸さんが葉巻を吸いながらそう呟いた。
関係ないことだがTHE RAMPAGEの幹部16人は全員が喫煙者だ。ストレスの多い仕事柄、みんなタバコや酒を捌け口としているのだろう。ま、見た目がかっこいいからというのも多分に含まれているだろうが。
話が逸れた。あおいさんと来栖の対戦の話だ。
それは、1週間前のこと。
『ゲームをしよう』
326敗目のゲームで、来栖はそう笑った。
『互いの1番大切なものを賭けるゲーム』
『大切なもの?』
『俺にとって1番大切なものはハッキリ言ってカネだ。この50年の人生で稼ぎ続けた莫大な財産。俺が負けたら、君に僕の全財産をあげよう。その代わり、俺が勝ったら──────────』
あおいさんは、黙って笑っていた。
笑っていた。
『君をもらう』
そんな風にして決まった一世一代の大勝負の噂は、あっという間にラスベガス中を駆け巡った。
勝負まであと1週間。Casino THE RAMPAGEのVIPルームにてアンティ方式、アクション3回のドローポーカー。場所を提供する俺たち側には賭け金の3割という破格の利益が入ってくることになる。ディーラーはあおいさんの指名で俺が務める。
莫大な額の金が動くことは間違いなかった。
「来栖には黒い噂が尽きないからな…警察も間違いなく動きますね」
特徴的なピンク色の煙草を加えて、拓磨が唸る。バラの香りがする、凝り性の拓磨らしいマニアックな煙草だった。それに追随するように、樹さんがぼそりと言った。その口にはアーク・ロイヤルパラダイスティーが加えられ、微かに紅茶の香りが混じる煙を吐き出している。
「グレーゾーンにいるのはあおいさんだって同じだし。未だにあの人のフルネームですら分からないんだから」
「…まこっちゃんが襲われたあの集団だって、もしかしたらあおいさんを狙ってたのかもしれないし。何にせよ警戒は厳重に、だね」
北人さんがラタキア葉をストレートで詰めたパイプを吸いながら、ぽかりと煙を吐き出す。あんなに香りとタールが強いもの、俺にはとても吸えたものじゃない。メンバー1のヘビースモーカーは間違いなく北人さんだった。
「警備体制の準備は俺に任せてください。警備部の出番です」
「俺もひっさびさに本気出しちゃいます〜」
葉巻のロメオYジュリエッタを咥えた海青さん、アーク・ロイヤル・アップルミントの灰をとんとん、と灰皿に落とす昂秀がそう息巻いた。こういった露骨な抗争の時は警備部コンビが最前線に立つことが多い。
そんな昂秀の隣では、龍がキャプテンアークのブルーを吸っている。
「ええ〜俺もたまには前線に出て戦いたいなぁ。最近カジノに出ずっぱりで身体ナマりそうなんすよね」
極細煙草を指に挟んだ翔吾さんが屈託のない笑みで笑えば、翔平さんも葉巻を手に椅子の上で跳ねる。
「俺も!俺も殺るなら前線に出してください!」
「落ち着け翔平。そんな派手にどんパチやる訳ないやろ。上の先輩たちにも迷惑かかるわ」
そんな翔平さんを窘める壱馬さんはいつものキセルを唇につけているし、健太さんはさっきから何本目かも分からないケントの6を灰皿に押し付けている。その隣では瑠唯さんがパイプの煙で器用に輪っかを作り、さらに山彰さんは葉巻のH.アップマンをくゆらせながら黙って話のなりゆきを聞いていた。
あれ、みんな吸ってるじゃん。俺も吸いたくなってきた。
俺はパッケージのおしゃれさと吸いやすさで愛用しているラッキーストライクを1本取り出し、これも愛用のジッポーで火をつけようとして…
「ちょ、まこっちゃん。タバコはあかんで」
「…は?」
陣さんに止められた。
現在進行形で煙草を吸っている人に。
「いやいや。みんな吸ってるじゃないですか」
「これ以上この部屋に喫煙者増えたら火災発生みたいになってしまうやろ」
「そうだよまこっちゃん、ほら見て。俺もう向かいに座ってるはずの樹が見えないもん煙で。樹!樹どこ!」
「陸さんうるさいです」
「あっ見えてないからって暴言吐かないでよ!」
「…もうここまで来たら15人も16人も変わりませんから。吸います」
しゅぼ、と心地の良い音がして、ジッポーが開く。肺いっぱいに煙を吸い込んで、また吐き出して。
あぁ、最高だ。
「うーわ受動喫煙」
「今更遅いって龍。どうせ俺たちなんかマフィアとカジノの二足のわらじで寿命が長いはずないんだから。太く短く生きようぜ」
「俺は100歳まで生きるつもりだけどね」
「なんか瑠唯ならやれる気がするわ」
山彰さんがとんとん、と灰皿に灰を落としながらそう呟いた、その時。
突然部屋に充満していた煙が一方向に向かってぶわりと流れた。
全員が一斉にそちらを見る。
「けほ、けほ……っ、ちょっと、何?火事?」
「あ」
全開になった会議室の入口に立っていたのは…
「あおいさん」
16人での定例会議で、力矢さんはパイプを蒸かしながらそう言った。
「そうですか…何だったんだろうあれは」
「まぁたぶんいつもの警察の手先やろ。最近俺らのシマをうろちょろしとるらしいし」
陣さんが眉をしかめながら吐き捨てるようにそう呟く。その指には陣さんお気に入りの葉巻、モンテクリストNo.4が挟まれている。
うちのカジノはLDHファミリーの重要な資金源であり、さらに裏社会の人間たちも多く集うため昔から国際警察の標的とされている。
しかし俺たちに手を出すということはLDHファミリーに明確に喧嘩を売るということだし、そもそも俺たちは攻め込まれてすぐに白旗を振るほどヤワじゃない。そんな理由から警察とはじりじりと睨み合いの状態が続いていた。
最近は特に警察の動きが活発になっており、ナワバリ内での小さな抗争もゲリラ的に勃発している。
まぁ、向こうの動きが変わったのにもそれなりの理由があるわけだけど。
「…たぶん、来栖とあおいさんの対戦の情報が広まってるからだね」
陸さんが葉巻を吸いながらそう呟いた。
関係ないことだがTHE RAMPAGEの幹部16人は全員が喫煙者だ。ストレスの多い仕事柄、みんなタバコや酒を捌け口としているのだろう。ま、見た目がかっこいいからというのも多分に含まれているだろうが。
話が逸れた。あおいさんと来栖の対戦の話だ。
それは、1週間前のこと。
『ゲームをしよう』
326敗目のゲームで、来栖はそう笑った。
『互いの1番大切なものを賭けるゲーム』
『大切なもの?』
『俺にとって1番大切なものはハッキリ言ってカネだ。この50年の人生で稼ぎ続けた莫大な財産。俺が負けたら、君に僕の全財産をあげよう。その代わり、俺が勝ったら──────────』
あおいさんは、黙って笑っていた。
笑っていた。
『君をもらう』
そんな風にして決まった一世一代の大勝負の噂は、あっという間にラスベガス中を駆け巡った。
勝負まであと1週間。Casino THE RAMPAGEのVIPルームにてアンティ方式、アクション3回のドローポーカー。場所を提供する俺たち側には賭け金の3割という破格の利益が入ってくることになる。ディーラーはあおいさんの指名で俺が務める。
莫大な額の金が動くことは間違いなかった。
「来栖には黒い噂が尽きないからな…警察も間違いなく動きますね」
特徴的なピンク色の煙草を加えて、拓磨が唸る。バラの香りがする、凝り性の拓磨らしいマニアックな煙草だった。それに追随するように、樹さんがぼそりと言った。その口にはアーク・ロイヤルパラダイスティーが加えられ、微かに紅茶の香りが混じる煙を吐き出している。
「グレーゾーンにいるのはあおいさんだって同じだし。未だにあの人のフルネームですら分からないんだから」
「…まこっちゃんが襲われたあの集団だって、もしかしたらあおいさんを狙ってたのかもしれないし。何にせよ警戒は厳重に、だね」
北人さんがラタキア葉をストレートで詰めたパイプを吸いながら、ぽかりと煙を吐き出す。あんなに香りとタールが強いもの、俺にはとても吸えたものじゃない。メンバー1のヘビースモーカーは間違いなく北人さんだった。
「警備体制の準備は俺に任せてください。警備部の出番です」
「俺もひっさびさに本気出しちゃいます〜」
葉巻のロメオYジュリエッタを咥えた海青さん、アーク・ロイヤル・アップルミントの灰をとんとん、と灰皿に落とす昂秀がそう息巻いた。こういった露骨な抗争の時は警備部コンビが最前線に立つことが多い。
そんな昂秀の隣では、龍がキャプテンアークのブルーを吸っている。
「ええ〜俺もたまには前線に出て戦いたいなぁ。最近カジノに出ずっぱりで身体ナマりそうなんすよね」
極細煙草を指に挟んだ翔吾さんが屈託のない笑みで笑えば、翔平さんも葉巻を手に椅子の上で跳ねる。
「俺も!俺も殺るなら前線に出してください!」
「落ち着け翔平。そんな派手にどんパチやる訳ないやろ。上の先輩たちにも迷惑かかるわ」
そんな翔平さんを窘める壱馬さんはいつものキセルを唇につけているし、健太さんはさっきから何本目かも分からないケントの6を灰皿に押し付けている。その隣では瑠唯さんがパイプの煙で器用に輪っかを作り、さらに山彰さんは葉巻のH.アップマンをくゆらせながら黙って話のなりゆきを聞いていた。
あれ、みんな吸ってるじゃん。俺も吸いたくなってきた。
俺はパッケージのおしゃれさと吸いやすさで愛用しているラッキーストライクを1本取り出し、これも愛用のジッポーで火をつけようとして…
「ちょ、まこっちゃん。タバコはあかんで」
「…は?」
陣さんに止められた。
現在進行形で煙草を吸っている人に。
「いやいや。みんな吸ってるじゃないですか」
「これ以上この部屋に喫煙者増えたら火災発生みたいになってしまうやろ」
「そうだよまこっちゃん、ほら見て。俺もう向かいに座ってるはずの樹が見えないもん煙で。樹!樹どこ!」
「陸さんうるさいです」
「あっ見えてないからって暴言吐かないでよ!」
「…もうここまで来たら15人も16人も変わりませんから。吸います」
しゅぼ、と心地の良い音がして、ジッポーが開く。肺いっぱいに煙を吸い込んで、また吐き出して。
あぁ、最高だ。
「うーわ受動喫煙」
「今更遅いって龍。どうせ俺たちなんかマフィアとカジノの二足のわらじで寿命が長いはずないんだから。太く短く生きようぜ」
「俺は100歳まで生きるつもりだけどね」
「なんか瑠唯ならやれる気がするわ」
山彰さんがとんとん、と灰皿に灰を落としながらそう呟いた、その時。
突然部屋に充満していた煙が一方向に向かってぶわりと流れた。
全員が一斉にそちらを見る。
「けほ、けほ……っ、ちょっと、何?火事?」
「あ」
全開になった会議室の入口に立っていたのは…
「あおいさん」