第一章
夢小説設定
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その年の10月。
『やりましたよ先生!このミス大賞です!』
「あー…そうですか」
締切間近の原稿を深夜まで書いていた私は、昼下がりに担当編集者からの電話で叩き起された。
寝惚け眼をこすりながら寝返りを打つ。私のお腹の上で寝ていた愛猫日本号がころりとベッドから転げ落ちていった。
ちなみに日本号は樹の家のじゅじゅと兄弟だ。まいるの子供が産まれた時に私がもらったのがこの子。
『何でそんなにテンション低いんですか!この賞は今後の作家人生にも大きく関わってくる重要なものなんですよ!』
「いや眠いんで…あと賞とか興味ないし…」
『またそんなこと言って!じゃあ僕が先生の分まで喜ぶんで!それでいいですね!?』
「好きにしてください、はい、じゃ、もう一眠りしたら原稿送るんで、はい、うるさいです、はい、それじゃ」
電話の向こうで大騒ぎしているのを無視して通話を強制的に終わらせる。
処女作からお世話になっている担当編集の日向さん。
私のことをよく分かってくれているけど、草食系な見た目の割には文学のこととなると暑苦しいほどの情熱を傾けてくるのがうざい。感謝はしてるけど。
「ねむ…でもお腹空いた…」
階下のさくら屋からは料理のいい匂いが漂ってきている。
私は寝巻きのジャージ姿のまま階段を降りて店に入った。とたんに店の常連さんたちが「よぉさくらちゃん!」と手を振る。
「おとーさん、お腹空いた」
「ん、あぁおはようさくら。今席空いてないからもうちょっと待ってろ」
「なんださくらちゃん、俺の膝座るか?」
「絶対やだ」
「さくらちゃん私たちのテーブルでよかったらおいでなさいよ、魚フライ食べる?」
「食べる~田中さん大好き」
「あらごめんなさいね田中さん、うちの娘が」
私は常連さんたちのテーブルに混ぜてもらうとフライをもそもそ食べ始めた。
その時、私のスマホが着信を知らせる。
樹だ。
「もひもひ?」
『…口の中のもの飲み込んでから喋って』
「んぐ…もしもし?」
『昼メシ?何食べてんの』
「お昼ごはん兼朝ごはんだけどね。アジフライ」
ていうかそんなこと聞くために電話をかけてきたのだろうか。
「どうしたの?」
『さっき日向さんから、さくらが何かすごい賞取ったって聞いたから。おめでとう』
「なんで樹にまで連絡してるのあの人…たぶんうちの親よりも先に連絡してるよ」
日向さんは基本的に東京に住んでいるけど、私が高校の頃に福岡まで来てくれたことがある。その時に樹にも会っているけど、まさか連絡を取り合っているとは。恐ろしい日向さん。
『今回の作品、すげぇ面白かったよ。あの錯覚を利用したトリックとか』
「ありがと。あ、あと11月の真ん中に東京でサイン会やるから予定空いてたらご飯行こ」
『え、まじか行きたい。予定確認しとく』
「ん。じゃあね」
『また連絡する』
通話を終えた私に、田中さんが嬉しそうに「彼氏?」と尋ねる。私は首を横に振った。
「ううん、そんなんじゃなくて」
「あらそうなの?さくらちゃん嬉しそうな顔してるからてっきり」
そりゃ片想いの相手だもの、嬉しくもなる。私は笑って答えた。
「私のファン第1号」
『やりましたよ先生!このミス大賞です!』
「あー…そうですか」
締切間近の原稿を深夜まで書いていた私は、昼下がりに担当編集者からの電話で叩き起された。
寝惚け眼をこすりながら寝返りを打つ。私のお腹の上で寝ていた愛猫日本号がころりとベッドから転げ落ちていった。
ちなみに日本号は樹の家のじゅじゅと兄弟だ。まいるの子供が産まれた時に私がもらったのがこの子。
『何でそんなにテンション低いんですか!この賞は今後の作家人生にも大きく関わってくる重要なものなんですよ!』
「いや眠いんで…あと賞とか興味ないし…」
『またそんなこと言って!じゃあ僕が先生の分まで喜ぶんで!それでいいですね!?』
「好きにしてください、はい、じゃ、もう一眠りしたら原稿送るんで、はい、うるさいです、はい、それじゃ」
電話の向こうで大騒ぎしているのを無視して通話を強制的に終わらせる。
処女作からお世話になっている担当編集の日向さん。
私のことをよく分かってくれているけど、草食系な見た目の割には文学のこととなると暑苦しいほどの情熱を傾けてくるのがうざい。感謝はしてるけど。
「ねむ…でもお腹空いた…」
階下のさくら屋からは料理のいい匂いが漂ってきている。
私は寝巻きのジャージ姿のまま階段を降りて店に入った。とたんに店の常連さんたちが「よぉさくらちゃん!」と手を振る。
「おとーさん、お腹空いた」
「ん、あぁおはようさくら。今席空いてないからもうちょっと待ってろ」
「なんださくらちゃん、俺の膝座るか?」
「絶対やだ」
「さくらちゃん私たちのテーブルでよかったらおいでなさいよ、魚フライ食べる?」
「食べる~田中さん大好き」
「あらごめんなさいね田中さん、うちの娘が」
私は常連さんたちのテーブルに混ぜてもらうとフライをもそもそ食べ始めた。
その時、私のスマホが着信を知らせる。
樹だ。
「もひもひ?」
『…口の中のもの飲み込んでから喋って』
「んぐ…もしもし?」
『昼メシ?何食べてんの』
「お昼ごはん兼朝ごはんだけどね。アジフライ」
ていうかそんなこと聞くために電話をかけてきたのだろうか。
「どうしたの?」
『さっき日向さんから、さくらが何かすごい賞取ったって聞いたから。おめでとう』
「なんで樹にまで連絡してるのあの人…たぶんうちの親よりも先に連絡してるよ」
日向さんは基本的に東京に住んでいるけど、私が高校の頃に福岡まで来てくれたことがある。その時に樹にも会っているけど、まさか連絡を取り合っているとは。恐ろしい日向さん。
『今回の作品、すげぇ面白かったよ。あの錯覚を利用したトリックとか』
「ありがと。あ、あと11月の真ん中に東京でサイン会やるから予定空いてたらご飯行こ」
『え、まじか行きたい。予定確認しとく』
「ん。じゃあね」
『また連絡する』
通話を終えた私に、田中さんが嬉しそうに「彼氏?」と尋ねる。私は首を横に振った。
「ううん、そんなんじゃなくて」
「あらそうなの?さくらちゃん嬉しそうな顔してるからてっきり」
そりゃ片想いの相手だもの、嬉しくもなる。私は笑って答えた。
「私のファン第1号」